血を見慣れぬ者達を、分身に任せ、追い遣り。
血溜りに近付いた総帥は、足元に転がる人間を、見下ろす。
見た事も無い男だ。黒髪に、見開かれた片目は雨降る前の灰色の空。
其れは既に、事切れ物言わぬ肉塊に変わっている。
「何があった、コージ、アラシヤマ」
訊ねた声は、背後に控える炎使いと侍に。
未だ青白さを頬に残す彼等は、其れでも気丈に問いに答えた。
「・・・・・・ドクターに頼まれて、わてそんお子に付いとったんどす」
そしたら、同僚に化けたその男が遣って来たと。そして、少年を殺そうとしたと。
守ろうとして、技まで繰り出して。
「後は――――――見た通りじゃけぇ」
「・・・・・・そうか」
深、と場が静まり返る。
この男は一体何者なのか。何故少年を狙ったのか。
言葉に出来ぬ素朴な疑問。けれど其れには、容易く答など出ないだろう。
聞きたくとも、当の本人は既に屍。死人は口を利かない。
「・・・・・・取り敢えず、コイツの身元の確認だな」
溜息混じりに、総帥が零す。
不殺を掲げた団内で、死体が出るなど。可也由々しき事態だ。
出来れば隠蔽してしまいたい。
けれど、動き出さねば事態の収拾は着かないから。
「ソイツの事なら、オレが知ってる」
しかし響いた声に、一同はハッと振り向いた。
其の先には、霞の様に希薄な気配で、存在感を殺していた。
金糸の子供。
「霧隠れの暗部だ。あの時、始末し損ねた」
響くは淡々とした、声音。
手の内にあった肉塊が、音も無く火に包まれ跡形も無く消え去る。
「道理で見つからない筈だ。まさか、と一緒に飛ばされてるなんて」
そして両の手を組み、転がる死体の前に赴いて。
底冷えする眼差しで其れを睨め付ければ、一瞬にして肉塊は炎上した。
「・・・・・・お前・・・・・・」
驚きに目を瞠る大人達。
そう云えば、爆発騒ぎに紛れて何も聞いていない。
其れで無くとも初顔合わせがアレだったのだ。
突然宙から姿を表した子供は、不思議で、不可解。
「お前等一体、ナニモンだ?・・・・・・ソイツとは面識があるみてぇだが」
大人達の視線が集まる中。
静かに答えたのは、黒髪の子供。
「俺達は、木の葉隠れの忍者だ」
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