医療棟。白い廊下を、足音もさせずに歩く長身。

目差す先は、ドクターの診察室からも程近い、個室。

相次ぐ研究の失敗結果――――――大なり小なりの爆発から、件の少年を新たに避難させた場所が、最も危ないマッドサイエンティストのお膝元とは。

頭の端で思いながらも、目当ての部屋のドアノブを握る。

察知したのは、動く一人の人間の気配。



「・・・・・・おめ一体ココで何してるっちゃ?」

「ああ、トットリはん」



思わずを装って掛けた声にふわり、と振り返ったのは、炎を操る、逢う魔が刻の気配を纏った男。

彼ははんなりと困った様に笑いながら、表れた忍者の問いに答える。



「やあ、ちょおキンタローはんとこに用があったんどすけど」

「・・・・・・キンタローの研究棟は隣っちゃよ?」

「へえ。せやけどなんや途中でドクターに捕まってもうて、留守番頼まれましてな」



言いながら、さらり、と眠る少年の前髪を掻き上げる。

其の寝顔を見詰める眼差しは、何処か聖母じみた慈愛の温もり。



「そうゆうトットリはんは、なしてココに?」

「僕?僕ぁ、その子の顔見に来ただけだっちゃ。ちょーど仕事も一段落ついたし」

「ほならこの子のお守頼んでもええどすか?わて、まだ仕事途中やさかい」

「いいっちゃよ、別に」



何気無く安請け合いすれば、炎使いは又はんなりと笑って。

腰掛けていた椅子から立ち上がり、入れ替わる様に場所を空ける。



「ほな、よろし頼みます」

「判ったっちゃ」



ぱたん、と扉が閉まり、壁の向こうで気配が遠ざかる。

其れを見届け、しかし忍者は椅子に座る事無く、少年を見下ろした。

其の瞳には、先程までには無かった剣呑な光。

くつり、と口角が愉悦に歪む。



「・・・・・・・・・・・・此れが、木の葉最強と謳われた暗部とはな・・・・・・・・・・・・」



そして呟かれた言葉は、嘲り含んだ白々しい声音。

片手に握られた、黒いクナイが鈍く光った。



































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