「やーやー諸君、捗ってるかーい?」



 のほほんのほほん。

 そんな形容詞が正しくぴったりな上忍の声に、策士の纏う空気の温度が何度か下がる。



「コレが捗ってる様に見えるんすか」



 常日頃でさえやる気のなさそうなのに、今日は其れに拍車を増し。

 言葉の奥に見え隠れする棘は何時もよりきつく。

 座り込んだ畳の上。周りに散らばるのは何枚もの、暗号解読に使われた書物や書き留め。



「まま、そうツンケンしなーいの。てゆーかもう殆ど説けてるじゃないの。感心感心」

「そりゃー三日も四日も食うのも惜しんで寝ずにやりゃあ当然すよ」

「トコロでナルトとサスケは?」

「ああ、そーいや気分転換に外の空気吸ってくるって言ったまんま・・・・・・」



 不意に、訊ねられた声に答えていた策士の言葉が途切れる。

 其の意味を察して、同じ様に銀糸の上忍もまた、一旦口を噤み。



「・・・・・・シカマル」

「・・・・・・何すか」

「・・・・・・・・・・・・ソレって、何時頃?」

「・・・・・・・・・・・・一刻くらい、前」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・その時コレの解読ってどれくらい進んでた?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・今と殆ど変わり無しで・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 沈黙。



「あいつら・・・・・・術試しに行きやがった・・・・・・」

「まーまーそう怒らない怒らない」



 ふるふると拳を作り、深々と溜息を吐きながら零す策士を銀糸は宥める。

 しかし憤りの矛先は、其の銀糸にまで向いて。



「アンタ良くそう暢気に構えてられんな」

「だってあの二人だからねぇ。片や現役暗部片や上忍一歩手前よ?」



 言い換えれば、其れだけ実力があるのだからと。

 ぎろん、と睨まれるのに、笑って返す――――――しかし。



「言っとくけど、この術未完だぜ?」

「・・・・・・・・・・・・は・・・・・・・・・・・・?」

「だから、未完成。チャクラの消費量とコントロールの難しさに、成功率は下手すりゃ三分の一を切る」



 再び沈黙。



「・・・・・・・・・・・・ま、まあ、だいじょーぶでしょあの二人なら。はは、は、はははは・・・・・・・・・・・・」



 やがて、乾いた笑いと共にそう呟いた上忍に。

 策士の下忍は、コレが自分の上司でなくて本当に良かった、としみじみ思うのだった。




 




 




 




 




 










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