団内1のマッドなサイエンティストの管轄下に置かれている医療部。
其の彼が、目に入れても痛くないと豪語する程に溺愛している、青の一族の青年が管理する棟がある。
元々医療棟であった其処は、何時の間にやら青年やマッドサイエンティストの飽くなき挑戦や興味や趣味が侵食していき。
完全に彼等の私物と化すのに、余り時間は掛からなかった。
其れ以来、其処は青年の名前の頭文字を取って、G棟、と呼ばれる様になり、団員は足を踏み入れるどころか近づきもしなくなったのだが。
総帥最愛の弟は、今現在其のG棟に入り浸っている。
お目当ては、つい先日遠征先から送還されたという人形の様な少年。
大人だらけの団内で、降って沸いたかの様に表れた年の近い少年だ。しかも嗜好に合った見目麗しさ。
興味を引くなという方が無理というもので。
最近弟がまともに話してくれないと、通信のたびに周囲に八つ当たりする兄になど目もくれず、少年の居る病室の様な白い空間に、足げく通っている。
にも関わらず。
「なーんでまだ寝てるかなー?」
「仕方ないでしょー?一見普通に見えるけど、この子コレでも重病人だよ?」
面白くなさそうに言うコタローに、グンマが苦笑した。
正確にいえば重度の薬物中毒者だ。
麻薬患者に有り勝ちな幻覚症状など全く見られず、暴れようとする事もないので忘れがちだが。
検査の度に弾き出される数値は、徐々に低くなってきているとはいってもやっぱり眉を顰めるもので。
しかも恐らくは、本人の意思に反し第三者の手によって薬漬けにされた。
細い腕に、何度も打たれた所為で火山口の様に爛れてしまった針の跡を見てそう思う。
「重病人っていえばグンマおにーちゃん。この人一体ドコが悪いの?」
「えーと、ソレは・・・・・・」
「病気してるってゆーより、ただ単に寝汚いだけにしか見えないんだけど」
「あ、あはははは・・・・・・」
思わず溜息を吐くのと、声を掛けられたのは丁度同時で、グンマは窮した返答を、笑って誤魔化した。
コタローは深くを知らないのだ。
彼が敵の兵士であった事も、薬漬けにされていた事も。
だから確かに、見様によってはそう取れない事もない。
何時来てもどれだけ長居しても、少年は一日の大半を眠って過ごしたまま。
たまに目を開けても、何にも反応ぜすに呆、と宙を見ているだけ。
其れでも飽きもせずに毎日顔を見に来るのは、きっとコタローがこの眠れる少年を気に入っているからだ。
「あーあ。早く元気にならないかなぁ」
「・・・・・・そうだね。早く良くなってくれればいいね」
備え付けの椅子にちょこんと座り。
足をぶらぶらさせながら言うコタローの頭を、グンマは撫でた。
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