告死兵団。大金さえ積めばどんな依頼でも請け負うという、傭兵団。

 平たく言えば、商売敵だ。

 しかも、有名であるにも関わらず其の情報は極小という、謎の兵団で。



「しっかしまあ、こーんなお子様がねえ」

「あのね。アンタも私も、初めて前線に出たのはこれくらいの年だったでしょうが」

「まぁそーなんだけどー。何かイメージが。蓋を開けたらああらビックリ仰天玉手箱、ってヤツ?」

「アンタ世間知らずのクセにどっからそんな言葉覚えてくるんですか」



 軽く言い合いながらも、医師の作業の手は止まる事無くなだらかに。

 人手が足りないからと今回助手として借り出された研究員も、慣れた手付きで其れを手伝う。



 二人の脇、診察台の上には、昏倒したまま眠り続ける黒髪の青年。

 否、未だ少年と形容した方が正しいだろうか。

 頼り無いくらいに細い四肢。紙の様に白い肌。

 戦いの場には不釣合いな程。人形の様に綺麗な子供。



「高松ー。成分結果出た」

「あー・・・・・・はい。こっち下さい」



 採血した血液から薬物反応が出たのは、まあ戦場で戦う兵士には当然として。

 だがしかし一応、という事で分析していた事を、ナチュラルに忘れていた事は隠したまま、視線を前に固定したまま片手を出し。

 しかし、一向に廻されて来ない紙に、医師が怪訝な眼を研究員に向ける。



「・・・・・・ん、だよ、コレ」



 手にした紙に食い入る様に。元来大きな紅い瞳を更に大きく見開かせ。

 研究員の其れは徐々に、険を帯びて鋭くなっていく。

 くしゃ、と。無意識に入ったらしい力に、頼り無い紙に皺が走った。



「ジャン?」



 何時に無く真剣な其の様に、作業の手を止め重い腰を上げて。

 研究員の手から結果表を取り上げる。



「一体何だっていうんで、す・・・・・・か・・・・・・」



 溜息混じりに零した言葉の語尾は掠れ。

 視界に入った文字の羅列に、医師は露骨に眉を顰めた。




 




 




 




 




 










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