ゆらり、と浮かぶ煙管の煙。
薄暗い部屋、座る老人は静かに姿を表した銀糸に声を掛けた。
「どうじゃった」
「其れらしい術が使われた形跡は、矢張りありませんでしたよ」
「・・・・・・ふむ」
「しかし、くんのチャクラは確かにあそこで途切れていますね」
まるで、空に浮く凧の糸が切れたかの様に。
報告に、老人が返すは沈黙。
ゆらり。煙のみが室内に動く。
耐え切れず、銀糸は躊躇いがちに口を開いた。
「そういえば、ナルトとサスケを知りませんか?一昨日から姿を見てないんですけど」
「彼奴等なら、一昨日辺りから休みもせずにずっと書庫を引っ掻き回しておるわい」
新たな問いに、間髪置かずに返る声。
捜索の成果が全くだったから、恐らくは、とは思っていたが。
「ああ、神有の森に関する文献か何か、ですか?」
「其れ以外に何が在るんじゃ」
少しでも。小さくとも。何らかの手掛かりを得る為に。
万が一の事を考えて、元より人手不足の忍を、其れでも探索に割き範囲を徐々に広げ。
事が起こった日の前後の、他国の動向にまで、目を光らせ。
本当に、必死である。
目の前に座す老人も。彼に懐いていた子供達も――――――そして、己も。
「・・・・・・やっぱり、考えられる事柄は一つ、ですかね」
「・・・・・・信じ難いがのう」
「俺だって未だに信じられませんよ」
ふぅ、と。煙管の煙を細く吐き出し。
ゆるり、と首を振る老人に、銀糸もまた溜息を吐く。
「――――――まさかくんが、神隠しなんかに遭ってしまうなんて」
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