風が、啼く。
空が憂鬱に染まる。
来る時を知るからこその。
彼等の落胆。嘆き。悲哀。
思い残す事など、己とて幾らも在るけれど。
仕方が、無いのだと。
宥め、あやして。
時が過ぎる度。
ヒトを捨てた此の身は妖の色香を纏い出し。
世界はとても優しくなり。
けれど反面、ニンゲン達は凶暴に、なって。
――――――いや、違う。
彼等は、気付き始めただけだ。
此処に居るのがヒトで無い事を。妖と呼ばれるモノで在る事を。
そして、抱く様になっただけだ。
神に近しい力に。畏れと、恐れを。
良くも悪くも、欲を抱くのはヒトの性。
欲が呼ぶのは争い。
危惧されるのは、過去の過ち。
繰り返されるなど、此方としては冗談で無く。
けれど此れから先、同じ事が絶対に起こる事は無いのだと。
断言出来る可能性は限り無く低いのも確か。
だからこそ。
声に成らない言葉で。
生まれた世界に別れを。
そしてせめて。
愛しい子供達に。
悟られる事無く。
別離を、と。
願うのは他でも無い己自身。