AM7:50。集合10分前。
何時もの様に何時もの集合場所へやってきたナルトは、其処に居た人物に目を丸くした。
「?」
思わず上げた素っ頓狂な声に、ナルトに気付いた彼はのっそりと見ていた巻物から顔を上げる。
「よう、早いなナルト」
「何でがココにいんの、ってかそのカッコ何」
がしゅたっ、と片手を上げるのと、ナルトが駆け寄りながら質問したのは同時。
その問いに、「まーちょっとなー」とは乾いた笑いを浮かべた。
ナルトの目の前にいるの出で立ちは、里から支給されている規定のサンダルに、黒い長袖のタートルネックのシャツと細身の七部丈のパンツ姿。
その上に、白くて大きな布をゆったりと左肩から袈裟懸けの様にして、腰帯で止めている。その腰帯の色も黒だ。
何時もの『畑仕事してるおっちゃん』的格好ではない。頭には麦わら帽子の変わりに黒いバンダナ。
しかも右腕に手甲。腰にポーチ。左足にホルダー。頭からずり落ちたヘアバンドの様に首に掛けられている額当て・・・・・・と、くれば。
「何でが忍のカッコしてんだよ」
そう。コレは忍服だ。規定の原型を留めていないくらい可也着崩しまくっているが。忍服以外のナニモノでも無い。
首を傾げるナルトに、はケッ、と吐き捨てながらぼやく。
「俺だって好きでこんな格好してんぢゃねぇ」
ソレでナルトはぴん、ときた。
「とーとーじっちゃんに脅迫されたか」
「・・・・・・良く判ったな」
「ああ、だってじっちゃんがを絶対忍にするって息巻いてたの、カナリ前からだぜ?」
目を細めてにぃんまり、と笑うナルトに、の肩ががっくりと項垂れる。
「・・・・・・・・・・・・別にならなくても仕事は出来るのに」
「暗部の仕事は、だろ?フツーの任務を任せるのには、ソレナリの肩書きが必要なんだよ」
「暗部の仕事だけでじゅーぶん。フツーの任務なんか任されたくないやい」
ぶーたれるの声。
ソレは自分よりも小さな子供みたいで、ナルトは今度は少し声を立てて笑った。
呪術師であるという事意外、表向き出生も実力もあやふやとされているは、立場的にも不安定な位置に居る。
今は絶えた呪術師の村。古い歴史を誇る斎伽一族の分家、を名乗る最後の一人。
例え引き取ったのが里の最高権力者であっても、元々は純粋な里の人間では無く。
例え、『月』と云う名で暗部の仕事を請け負い里に多大なる貢献をしていても、その事を知っているのはほんの一握り。
天気読みか失せ物探しくらいしか能の無い厄介者と、上層部の一部の人間から見られてもいる。
何も人手不足だからと云うだけでそんな彼を忍にするのは、幾らあの老人でも至難の技だった筈だ。
(・・・・・・一体どんな手を使ったんだか)
ちょっと気になるが、ろくでもない手だったんだろう。
まあ、自分に実害が無ければ良い。ナルトはあっさり考えを切り替える。
彼を忍にすると云う行動。難しいがソレを遭えてあの老人が押し通した理由。
ソレは恐らく、ナルトの思いと同じで。
このまま、に人知れず消えて欲しくは無かったのだ。
何時何時木の葉の里から消えても、可笑しくは無い雰囲気を纏う人だから。
だから、此処に居なければならない理由を、此方側から作ったのだ。
此処に居る理由を、求めないから――――――否、求める術を、知らないから。
忍になる事で、少しでも彼の居場所が確固たるものとなればと思ったのだ。多分。
そして、何より。
重い枷を付けたまま産み落とされ、暗闇の中で育ち、其処から開放されても尚、闇に生きようとする彼を。
何も持たぬが故に自ら進んで闇のみを見据えようとする彼の眼を、光に向けさせようと。光の下に引き摺り出そうと。
正規の忍になれば、暗殺ばかりでなく、色々な任務を言い渡される。
下を見れば其れこそ、逃げた家猫の捕獲や庭の草むしりなど、ピンからキリまで・・・・・・そんなのはまあ、下忍が請け負う任務であるが。
何ならカカシの様に、下忍の育成をすれば良いのだ。
そして徐々に、人を殺す仕事から遠ざかっていければ。
余り乗り気で無い本人には悪いが、彼を忍にするのは、その第一歩だ。
暗部の任務ばかりをやって人を殺し続けるばかりのを、ナルトは快く思っていないから。
だから、が晴れて正式な忍になったと云う事を素直に嬉しい、と思う。
ソレに。
(が忍になったって事は、もしかしたら何時かは表で一緒に任務に就く事があるかも知れねーよな)
何時になるのかは判らないが。
そう思い、ふとそんな彼が如何してこんな処に居るのか、未だ理由を聞いていない事にナルトは気付いた。
「んで、は何でココにいんだ?」
単に自分に報告しに来ただけなら、別に火影邸でも出来る筈だ。ナルトはほぼ毎日、通っているのだから。
こんな朝早くからこんな処に来る理由が無い。
の顔を見上げて、訊ねる。
そんなナルトに返って来た言葉は。
「ああ。俺、今日から暫くお前等の臨時の担任」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
余りにも早くに訪れた機会に、思わず拍子抜けした。
イキナリ任務を押し付けられました。
<<バック ネクスト>>
<<バック トゥ トップ>>