まあ色々あったけど、東海・東山・北陸の、名立たる武将が同盟を結んだ。

そのお陰 (?) で、日の本の国の約半分、関東側がひとつに纏まりつつある、そんな夏真っ只中の今日この頃。

戦も無く穏やかな日が続く――――――でもソレは、例えるなら嵐の前の静けさだ。




 




 




 






日の本、真っ二つに判れる、の巻。

〜てぃーぴーおーは弁えてるからね。こんなトコでキれたりしないよ。〜





 




 




 




 
2ヶ月ぶりくらいに主要の方々が集まった小田原城の会合で。





「九州が徳川に下ったそうじゃ」

沈痛な面持ちでそう告げたのは、じじさまだった。





「ちゅうごくがおだにくだるのも、じかんのもんだいだときいています」

引き継ぐ様に、軍神サマが付け足し。





「四国と豊臣が今事を構えているそうだが、四国劣勢、との報もある」

お館サマが溜息混じりに零す。





「・・・・・・Ah、俺んトコにもその情報は来てる。で、」

ぱさり、と筆頭さんが持ってた巻物を放り投げながら口を開いた。





「一番新しい情報だ――――――その織田と徳川、そして豊臣が、手を組んだ。中国は降伏、四国は国主の長曾我部元親が戦の最中に行方知れず、だとよ」





ざわつく室内。

そこかしこで驚きの声が、上がる。





「・・・・・・・・・・・・其れは確かか、独眼竜」

低く、お館サマが訊ねて来る。

ソレを、筆頭さんは真っ向から受け止め。

「Yes。小太と・・・・・・風魔と竜爪に探らせた。この2人が持ってきたネタだ。間違いは無ぇよ」





再び、ざわめき。

伝説と謳われる忍に、智略に長ける、と噂されている (らしい) あたしだ。

そんなあたし達の名前を出しただけで、信憑性は増す。





まあぶっちゃけ、このネタが出てきたのは本当にあたしからだったりするのさ。





縁側で猫さん達とかと世話話してた時に、そんな事を猫さんから聞いた。

んで、何か西できな臭い気配がーとか筆頭さんに言ってみて。

筆頭さんは、ちぃと確かめて来てくれねぇか小太、っつって、小太をホントに関西に向かわせた。





「――――――そういえば、その風魔はどうしたんじゃ?今日は来ておらんのかのう?」

ふ、と。

思い出した様にあたしの方を見たじじさまに。

筆頭さんと右目さん、そしてお館サマの隣に座っているワンコの、そのまた背後に控えてたオカンがぎくぅ!!っと強張った。





「・・・・・・・・・・・・あ、ああ、アイツか?」

「・・・・・・・・・・・・ふ、風魔は、今、少し、まあ、何だ」





目を泳がせながら、絶対あたしの方を見ない様に、竜の主従は言葉を濁し。

オカンからはあたしを気遣う様な怖がる様な視線。

・・・・・・うふふ。ヤだなぁもう。

いくらあたしでもこんなトコでプッツンしたりしないってばさ。





そんな主従の態度から、今日はホントにあたしの傍に小太がいない事に気付いたじじさまが首を傾げる。

「何じゃ、来ておらんのか。あやつが任務以外で殿から離れるとは、珍しいのう」

ホントに不思議そうな顔するもんだから、思わず苦笑が出ちゃった。

「久しぶりに将棋の相手でもしてもらおうと思っておったんじゃが」

会合にも関わらずどこかのほほんとしたじじさまの呟きには、たしかに落胆が混じってて。

「すみません。でも、俺がドクターストップかけたんですよ。絶対安静だって」

じじさまから孫と遊ぶ楽しみを奪ってしまった事にはちょっと申し訳無く思っております、ハイ。





だけど、再び。

硬くなってしまった室内の空気。

その中心は、鋭くあたしを見据える、さっきまでは好々爺としてたじじさまからで。





「容態は」

「骨折5カ所。打ち身裂傷火傷は小を含めると数えきれず。一番でかかったのは、真一文字に裂かれた腹の傷ですかね」





にぃっこり、と微笑みながら。

短く聞いたじじさまに答えるあたしの背後に吹き荒れるのは、でっかい嵐かはたまたブリザードか。

まあ、周囲の反応を見る限り、暗雲は確実に背負ってるんだろう、うん。





「何処の手の者に」

「魔王の処の狂人に、らしいですよ」





うん。どうやらホントにあの織田傘下の鎌持った変態がヤッたらしいんだな。

会ったら小太の受けた傷100倍返し決定だあんにゃろうハイけってーい。

なんてうふふふ黒い笑みを浮かべてたトコ見られて、筆頭さんと右目さんにドン引きされたのもつい最近。





「助かるのか」

「死なせるとお思いですか、この俺が」





――――――せんせい、いってたこと、ほんとうだった。

そう言って、全身包帯だらけの小太が何故かオカンに支えられながら帰ってきたのは、たった1週間前の出来事だ。

お座成りにもホドがある応急処置に、ぶっちぶち頭の血管切ってオカンに怒鳴りながら治療を施したのも、その時。





・・・・・・・・・・・・小太は、あの時からずっと眠ったままだ。





「治してやりますよこの俺が。ええ、後遺症も何も傷痕すら残す事無く完璧に。治してやる。治してやりますとも」





くつり、と喉が震える。

誰が、あんな変態の着けた傷を小太に残すものか。

誰が、この先小太を寝たきりなんかにさせるものか。

コレは決定事項だ。誰が何と言おうとあたしが決めた。文句など聞かないし、言わせない。

例え、大神にだって。





「誰が、死神なんぞに小太をくれてやるものか」

死なせない。絶対に。




 




 




 











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