本物の陰陽師なんて。この時代、滅多にお目に掛かれないモノらしい。

前に言ってたけど、筆頭さん・・・・・・一国の主ですら今まで偽物しか見た事がないってくらいには。

だから、風来坊や腹心さんが俄かに信じられないのも解る気がします。




 




 




 






風来坊、嵐を持ってくる、の巻。

~脱線しないで話進めてよ。~





 




 




 




 
「・・・・・・其れは誠ですか、政宗様」

うん。思わず聞き返したくなるのも解りますがね、腹心さん。

「Factだっつってんだろ。・・・・・・その巾着だって、俺や小太が手ぇ突っ込んでも何も出てこねぇクセに、だと色々引っ張り出せるのが良い証拠だ」

ひらひらと手を振って、筆頭さんがあたしの腰に着いたポーチを目で指す。

・・・・・・・・・・・・ああ。まあ確かにコレだけでもじゅーぶん証拠になりますね。





そーいやずっと不思議だな、って思ってたんだよ。

何が、って。何時の間にか筆頭さんがすんなりあたしを陰陽師だってナチュラルに信じてる事が。

小太が信じるのは解るけど――――――だって目の前ででっかい術を披露したからね!





まあ正確には陰陽師でなく術師、しかもアタマに 『魔』 という文字が付きますが。

筆頭さんたちにとっちゃどっちも似たり寄ったりだろうから、敢えて訂正はいたしません。

だけどあたし筆頭さんの前では鳥さん達なんかと喋った事あるくらいで、術なんて使った事もないのに。

術師ですーって告白した当初なんてモロ半信半疑だったハズだ。

・・・・・・・・・・・・そーか。こんなトコで確信持たれてたのか。





「・・・・・・あー。そういや先生、どっからあんなでっかい鉄扇とか拳銃とか出して来たんだろうって思ってたけど、もしかして・・・・・・」

「Ha、その巾着からに決まってんだろ」

その通りですが。良く見てますね筆頭さん。

・・・・・・てかね。今はあたし云々よりもね。





「――――――話、脱線してない?」

ポソッと言ったら、筆頭さんがハッとした。

「Ah、そうだった・・・・・・Hey風来坊、3国が戦支度してるってのぁ、Truth (本当) なのか」





聞かれた風来坊は真面目な顔を筆頭さんに向けて、筆頭さんの隣にいた腹心さんも表情を厳しくして風来坊に向き直る。

小太も、あたしの袖をきゅっと握りしめながら、窺う様に風来坊を見て。





「――――――ああ、本当さ。虎と軍神が、とうとう決着付けるみたいでね」

「Hum・・・・・・まあ、あの2人なら近いうちにやるだろうとは思ってたがよ」

・・・・・・あー。たしか武田信玄と上杉謙信って長年のライバルなんだったっけ。

だからその2人がドンパチやらかすのは、まあ、当たり前ってコトですか?

んー。けど。





「豊臣は何処と戦を?」

あっ。腹心さん一緒。あたしの疑問モロ代弁。

・・・・・・・・・・・・つか、考えられんのはひとつだけ、なんだろうけど。





「漁夫の利でも狙ってんじゃないの」

縁側に乗り上がってあたしの足に頭乗っけて寝転がってる牙をナデナデしながら横やり入れてみた。

「大方、虎と軍神がぶつかり合って両方がへばった頃に、横からオイシイとこ全部持ってこう、て覇王は思ってんじゃないの」

したら風来坊、バッ!とあたしを見た。

・・・・・・・・・・・・うーわー。当たりですかい。





「・・・・・・Hey、風来坊。ソレ本当か」

あ。なんか、筆頭さんの声のトーンが下がった様な気が。

「――――――いやぁ、参っちゃうね先生には。コレじゃ、俺が情報持ってきた意味ないじゃん」

逆に風来坊は、なはは~とヘタレな笑顔を浮かべる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・んん?情報??





「ナニ、情報だったの」

「へぇ・・・・・・情報、ねぇ」

あたしと筆頭さんの視線が合う。

・・・・・・視界の端で 「またこの2人は何か良からぬ事を・・・・・・」 て感じで眉を顰めてる腹心さんは見なかった方向で。





「つったら、アレだよね。つまり風来坊は、情報売りに来たワケだ・・・・・・売る、って事は、対価を望んでる、って事だよね?」

「だろうなぁ。でなきゃ、こいつぁホントの暇人だしな・・・・・・で、風来坊。アンタの望みは何だ?俺に、何をして欲しくて奥州に来た?」





合わせた視線を風来坊に戻しながら、訊ねる。

そしたら、風来坊は、しゃんと背筋を伸ばして。真剣な顔つきをして。

「頼む、独眼竜――――――豊臣を、止めて欲しい」

深々と、頭を下げた。




 




 




 











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