桜の花が満開を過ぎ、葉の緑が混じる頃。 よーやく落ち着いた相州の政 (まつりごと) に、筆頭さんは奥州に帰る事を決め。 やっぱりあたしも、有無を言わさずお供する事になった。 |
風来坊、嵐を持ってくる、の巻。 ~ココは駆け込み寺ですか。~ |
ぴぃちく。とかどっかで鳥さんが鳴いている。 そんな春うららか、白い雲をぷかりぷかりと浮かばせた淡い青空の下。 あたしは、小太と一緒に縁側に座って、キバ (狼さんの名前。名付け親は筆頭さん。牙、と書くそうな) をナデナデしながらずずずとお茶を飲んでいた。 ・・・・・・・・・・・・なんで小太がナチュラルにココにいんの?なんてのは突っ込まないでね。 だって着いて来ちゃったんだものこの子。 書面上、北条のじじさまにはクビにされてて。ソレ以前 (?) に、小田原は奥州に負けて傭兵を雇う理由も余裕も無くなっちゃったし。 じゃあ一度里帰りでも・・・・・・って言ったトコロで、風魔の里は自称魔王に滅ぼされて今は無いらしい。 じじさまからは半ば本気で小太を養子に、って話も出たけど、小太はソレを丁重にお断りした。 んで。新しい職場探さなきゃ、ってなって、そしたら筆頭さんが 「なら、の護衛として俺が雇う」 って言い出して・・・・・・今に至る。 ――――――・・・・・・・・・・・・嬉しいんだけどね、うん。 でもぶっちゃけあたし自分の身くらい自分で守れるし、小太より強いし。 護衛よりも副業の助手が欲しいって感じだったから、小太にはつふーのカッコしてもらってホントにあたしの助手まがいの事やってもらってる。 だから、小太があの 『風魔小太郎』 だって知ってるのは、奥州では筆頭さんと腹心さんとあたし (と、牙。) だけだ。 ちなみにココは、お城の離れを改装して作られた診療所。 しかもあたし専用。だから診療所っていうより、あたしのお部屋、って言った方がイイ。 相州から戻ってきたらできてた。 ・・・・・・ここまできたら、もー奥州がホームグラウンドでもいっかー、なんて思ってきている今日この頃。 「!!」 のほほんのほほん、としてたら、右目さんがバタバタとやってきた。 うん。なんか慌ててる感がぱっつんぱっつんです。 「――――――どしたの、右目さん」 「政宗様をお見かけしなかったか!?」 「・・・・・・・・・・・・ナニ、また政務から逃げ出したの」 全くあのトノサマは。 はあ、と溜息を吐いて小太と牙を見る。 そしたら小太は、こくん、とひとつ頷いて、牙と一緒に、腹心さんと入れ違いになる様に走り出した。 「すまん、ふう・・・・・・小太!!牙!!」 その背中に思わずふうま、って呼びそうになって慌てて訂正して声を掛ける右目さんに、ひらひらと手と尻尾を振って、小太と牙は見る間に姿を小さくしていく。 「――――――さて。お茶でも煎れようか。ちょっと待ってて」 「いや、そうしたいのは山々だが・・・・・・」 「筆頭さんなら、小太と牙が見つけてくるよ」 小太は気配に敏感だし牙は鼻が良いしね。 よいしょ、と立ち上がり、新しく湯呑を持ってこようと部屋の奥に行こうとした時だ。 「先生!!ああっ、小十郎様もコチラにいらしたんですか!!」 うぉうっとう? でっかい声を出して駆け込んできたのは、リーゼントさん。 なんか今日ココ駆け込み寺みたいだな。 「如何した、何かあったのか」 右目さんがリーゼントさんに振り向く。 リーゼントさんは、あたし達の前でキキィッ!と止まって、ぜぇぜぇしながら言った。 「城門前でっ、ド派手なヤツが独眼竜を出せって立ち回りをっっ!!」 ――――――・・・・・・・・・・・・ド派手、ですか。 って言ったらBASARAの世界で浮かび上がるのはたった1人なのですが。 |
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