こっそりお城へと戻って、小太郎を布団に押し込んで、あたしも自分に宛がわれた客室に戻って。 ああ疲れた、と思いながら、寝間着にも着替えず布団にぱたんきゅー。 もーこのまま筆頭さん達が奥州に帰るって言うまで惰眠を貪ろうとしたけど・・・・・・そうは問屋が降ろさなかった。 |
伝説の忍、懐く、の巻。 ~やっと寝付いたコトなんだよ起こさないでよ!!~ |
ドタバタと、なんかすっごい地響きみたいな音に、意識が浮上した。 ・・・・・・・・・・・・うぅ~。ウルサイ・・・・・・・・・・・・ あたしはソレを遮る様に、頭まですっぽり布団の中に潜り込む。 だけどドタバタ、は消える事なく。むしろだんだんと大きくなっていって。 すぱぁん!! 「Hey!!!!Get up (起きろ) !!」 ・・・・・・・・・・・・うー。うん? やだよあたしついさっき寝付いたトコなのに。 今ならまだ寝れる。だいじょうぶ。ちょーどイイ具合に抱きマクラもあるし。 だからせめてあとじゅーじかんねさして。 「起きろっつってんだろ馬鹿!!・・・・・・って何でテメェがの布団に潜り込んでやがんだ伝説の忍ぃぃいい!!!」 がばっっ!!と掛け布団を剥ぎ取られた。 ・・・・・・ううう!!空気寒い!!寒いって!! しかも開けっ広げられた襖から降り注ぐ太陽の日差しが目にイタイです!! 抱きマクラをぎうっと抱き締めながらもぞもぞと日差しから逃げる。 でもこの抱きマクラあったかいのになんか重い・・・・・・・・・・・・重い? ぱっかり。目が開いた。 紅い前髪の向こうの青い目と、目が合った。 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 「にょおぉぉぉぉおおう!?!?」 ・・・・・・・・・・・・なんであたし抱きマクラでなく小太郎さんを抱き締めてんの!? 起き抜け早々目の前にあったのが美青年のどアップなんて心臓に悪いよもう!! 状況が把握できた途端、あたしはガバッ!!と小太郎から離れる。 「・・・・・・・・・・・・如何いう事だ、」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・如何いう、って言われても」 ・・・・・・・・・・・・うん。チンモクが苦しいです。 ああっ。ヤメテ筆頭さんそんなジト目であたしを見ないで!! こらこらっ。小太郎も寝間着肌蹴させながら目ぇコシコシ擦ってんじゃないそんなカワイイ仕草思わず襲っ、げふごふんっっ!! ゆ、誘惑しないでお願いだから。 「――――――何じゃ。朝も早うから修羅場かの?」 しかもジジィ筆頭さんの後ろからひょっこり顔出したと思ったらなんてオソロシイ事を!! 「断じて違う。」 じじさまの問いは一刀両断して、あたしは小太郎に向き直った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で。忍、どうしてお前は此処にいるの」 ・・・・・・・・・・・・うん。ソコでもぢもぢ寝間着の袖弄りながら恥ずかしそうに俯くのはやめて下さいね。襲いたくなるから。 「ほうほう。そうかそうか。小太郎は医師殿が気に入ったのか」 ・・・・・・何でじじさま解ったの。 「・・・・・・だからって、行き成り布団に忍び込みますか普通?」 しかもあたしよ?小太郎簀巻きにしたのもアバラ折ったのもあたしなのよ? 「・・・・・・Hey、じーさん。アンタ一体孫にどんな教育してんだよ」 うんあたしもソレすっごい知りたい。 てかソレを言うならさー。 「・・・・・・・・・・・・人様の城に来てまで唯我独尊に人の安眠を邪魔する人が教育云々言えた義理でも無いと思うけど (ボソボソ) 」 「――――――Ah?何か言ったか、?」 「いや何も」 っふう。危ない危ない。思わず心の声が。 内心冷や汗たらーりさせながらシラを切るあたしを、筆頭さんは腕を組んで疑わしそーな目で見る。 そんなあたし達の傍で、じじさまはよっこいせ、と座り。 「ところで小太郎。ちと聞きたい事があるんじゃが」 その問いに、もぢもぢしてた小太郎もきちんと正座し直して、じじさまに向き直る。 ・・・・・・・・・・・・てゆーかココあたしの部屋・・・・・・・・・・・・ふ、布団が座布団代わりに・・・・・・・・・・・・ 2度寝したいんだけどなぁ。無理かなぁ。無理だよなぁ。 「お主、寝ておれと言うたに、昨晩城を抜け出したじゃろう」 あ。小太郎固まった。もー冷や汗だらだらって感じがしだした。 「あ、そうだ!!Hey、あんた昨日の晩に何かやっただろ!?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。とか思ってたら次の矛先あたし? 「・・・・・・・・・・・・別に、此れといって何もしてないけど」 「Han、惚けんなよ。夜中にあんたがソコの忍抱えて城に入るのを、巡回中の兵が見てるんだ」 「その前に、戦場が正体不明の光に包まれた、という報告も受けておるんじゃが」 「で、さっき見に行ったんだが・・・・・・戦場だった筈なのに其の形跡が全く無かった。死体も血の跡も何もかも」 「其処にあったは、ただただ広い草原よ・・・・・・はて、一体何が、たった一晩で起こったのじゃろうのう?」 ・・・・・・・・・・・・あー。見られてたのか。 しかも正体不明の光、って・・・・・・アレだよね、うん。 あたしは、はぁ、とひとつ溜息を落とす。 そして最初に向き直ったのはじじさま。 「――――――北条殿。彼を責めないでやってくれませんか。彼は、俺の動向を気にかけて後を着けていただけですので」 ソレから、今度は筆頭さんに顔を向けて。 「政宗。お前まさか俺の本職を忘れた?」 したら、筆頭さんはキョトン、として何を今更、みたいな感じで言い返してきた。 「ああ、陰陽師だろ?Don`t you forget? (忘れてねぇぜ?) 」 「何と!医師殿は、実は陰陽師じゃったのか!」 「ってぇ事は・・・・・・報告にあった光とやらは・・・・・・」 「屍肉喰いが大量発生したから、手っ取り早く浄化してやろうと思って術を使ったら、ああなった」 「What?しにくくらい、って何だ?」 「動く屍――――――死霊が死体に憑いたモノ、かな。死体を喰い漁るからそう呼ばれているけど・・・・・・奴等は、生きた人間をも襲って喰らう」 「・・・・・・・・・・・・Crazyだな、そいつぁ・・・・・・・・・・・・」 すこん、と納得した筆頭さんは、想像しちまったうげぇ、とかぼやいてすんごい顔をしかめながらじじさまの横に腰を降ろす。 いや、想像なんてするもんじゃないよアレは。 つかあたしの布団・・・・・・うう。今日は昼寝でガマンするか。 だけどそんな筆頭さんの横で、ほうほうと笑いながら髭を撫でるじじさまの目は、笑ってない。 ・・・・・・・・・・・・あう。そんなマユツバ信じられっか、ってな感じがビシバシと。 と、ココで小太郎が動いた。 つつつ、とあたしに寄ってきたかと思うと、きゅ、とあたしの腕に両手で抱き付き。 「・・・・・・おきな。せんせい、いう、ほんとう。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだろう。なんなんだろうこのカワイイ生物。 なんかゲームの中の風魔小太郎って最強孤高の忍って感じだったのに。 「・・・・・・こたも、みた。うごく、しかばね・・・・・・したい、たべて・・・・・・おそって、きた。」 「――――――間違い、無いんじゃな?」 「うん。」 こくり、と頷く小太郎に、じじさまは今度こそ疑りを払拭した目であたしを見る。 てゆーかすんごい信頼だね。なんか 「ウチの孫は嘘吐かん」 てじじバカ大爆発? いやいやそれより何より小太郎さん自分で自分の事 「こた」 ってしかも 「うん」 ってあんた一体いくつですか。 「・・・・・・Ah-。風魔、お前一体歳幾つだ?」 あ。筆頭さんお仲間お仲間。 「・・・・・・?じゅう・・・・・・はち?」 ぅええ!?!?じゅうはち!?まだ10代!? 「Ha!?俺より年下かよ!?マジかじーさん!?」 「真じゃ。風魔は、忍は道具である、という方針を貫いておった里じゃからの。忍の育成の上で、情緒というモンは徹底的に排除するんじゃ」 ――――――あ。 じじさまの笑みが。『記憶』 の中にあった老人の笑みと重なった。 あの、『』 を引き取って、愛しい金色と黒色に引き合わせてくれた。 幼子達に課せられた重い重い業を、憂い嘆いて抱き締めてくれた、優しく悲しい笑みと。 「奥州の竜。そして異国の医師殿。年寄りの頼みじゃ――――――どうか小太郎と、ワシの孫と仲良うしてやってくれ」 じじさまが、す、と頭を下げる。 ソレに小太はわたわたと慌てて。 だけどあたしと筆頭さんは顔を見合せる。 「No problem――――――新しい弟、か。案外悪くねぇ」 「や、小太は案外しっかりしてるから、政宗の方が弟になるかもな?」 「んだと!!もういっぺん言ってみろ!!」 そんな言い合いを始め出してしまったあたし達に、じじさまも小太もキョトンとし。 次には、はにかむ様な嬉しそうな笑みを、浮かべた。 |
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