「――――――ジャスト1分。」

呟いて、あたしは左手の懐中時計をぱちん、と閉める。

そして、右手の上に浮いていた正方形のキュービックをつん、とつついた。

途端、7色に発光していたソレは急に光を失って。





「ドコにイツ落したんだ?」

「ヨークシンに5日後。」

聞いてきたにサラリとお返事。

そして右手をぎゅっと握り込むと、ぱきん、と乾いた音を立ててキュービックは塵になった。





「ねえ、さっきのは何?」

あたしの手元をじーっと見てたゴンが顔を上げる。

「ソレに、どーやってアイツラ消したんだ?」

同じ様に手元を見ていたキルアが、旅団さん達のいたトコを一瞥して。

あたしはニッと笑いながら。





「俺の念能力のひとつ。『偽りの箱庭』ってのさ」




 




 




 





 
ちょこっとだけ仕事を再開した日。




 




 




 




 
『偽りの箱庭』。

『絶対の守護者』、『実現する幻想』に引き続き、あたしが編み出した新しい念能力。

亜空間に箱を作って、その中に入れたい人間を入れちゃう、って能力だ。





「へー。そんな事も出来るんだ、念って」

「何でもアリだなー」

あたしの説明に、子供達は感心・・・・・・だけどね。





「何でもアリ、ってワケでもないんだなコレが」

「そーなの?」

「うん俺は特質だから主に物質と空間を操る?みたいな念だけど」

「俺は強化系だからみたいな念は編み出せないんだ」

「特質?強化?」

「念にも属性があるって事さ」





ぽんぽん。がゴンの頭を撫でながら言う。

「ソレに、念だって万能じゃない。例えばさっきのの『偽りの箱庭』は、の右目を見たヤツにしか効かない」

そーなのです。月の青銀を見た事のある人でないと、『箱庭』には入れられません。

何でこんなメンドい設定したかってゆーと・・・・・・団長サマの念対策です。

月の青銀、って断定したかんね。コレは盗んでもあたし以外使えないのさ。





「発動する時には『招く』と『箱庭』っていうふたつのキィワードが必要だしね」

くしゃり、とキルアの頭を撫でながら付け足す。

しかもふたつが繋がる様に文章にしなきゃいけない。言ってる間に懐潜り込まれたらどーしよう。





「ソレに、入れっぱなし、ってのも出来ないんだ。中で人が死んでもダメ。そうなったら1人につき1年間、の念は封印状態」

そうそう。入れたら必ず出す。しかも24時間以内に。

死人は・・・・・・まあ、出ちゃう様な人選はしないし瀕死の重傷者を入れるつもりもないけど。





「あと、一回使ったら、入れた人の数だけの日数分、使う事出来なくなるし」

さっきの旅団さん達は7人だったから、あたしは今からきっちり1週間、『偽りの箱庭』を発動する事は出来ないのさ。





「っていうふうに、念ってのは何でもアリの便利なモノってだけじゃないんだ」

「覚えときなよ?ゴン、キルア」

「「はーい。」」

締め括ると、子供達は手を上げて返事をする。





――――――なんか学校の先生になった気分・・・・・・うん。コレはコレで萌えるかも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ。いかんいかん。子供達は真剣なのにあたしがこんなんじゃ。

てゆーか。なんかもー最近誘惑多いんだけど。大丈夫なのかコレであたし。





(大丈夫。もしがコイツ等毒牙に掛けようとしたら俺がしっかりヤッてやるから)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そのヤるってのは殺ですか。殺ですね?

(いやいや、ソレは流石に・・・・・・まあ、某団長や変態や長男辺りを相手に同じ目にあってもらうくらい?)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・謹んで辞退申し上げます。

つかソレは死よりも辛い拷問だよ!!





サラリと怖い事を思念で言ってのけたに、あたしはひきっと顔を引き攣らせる。

気付いたキルアが「どーしたんだ?」て聞いてきて、でもあたしはソレに答える事が出来ない。

そしたら。

「・・・・・・あ。でもソレって、すっごくヤバいんじゃねぇ?」

なんかピンときたらしいよキルア。つか何がすっごくヤバいって?

もしかしてこの子あたしとの念話聞こえるの!?





「アイツ等が今戻ってきたら、同じ手は使えないって事だろ?」

「・・・・・・あ。そーだよキルア。すっごくヤバいよね

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、ソッチですか。

「いや、ソレは大丈夫」

「何で?だって、さっき7人入れて発動解除したから、7日は使えねぇって事だろ?その『箱庭』」

至極ごもっともな意見です。良く気が付きました。やっぱこの子等頭イイ。

だけどあたしとは顔を見合せて。





「『偽りの箱庭』のメリット。『箱庭』の中で流れる時間は、1分単位で俺が自由に操る事が出来る」

「あと、今までが行った事のあるトコロなら、ドコでも中身を放り出す事が出来る」





「――――――ああ!じゃ、いっちゃん最初にが言ってたヨークシンに5日後って」

「そ。『箱庭』の中じゃ1分しか経ってないんだけどね」

「ヤツ等が外に出るのはココじゃなくヨークシンで、その時には既に5日経ってるってワケだ」





へー、と感心する子供達に。

あたし達は、に、と互いに悪戯っ子みたいな笑みを浮かべた。




 




 




 










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