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その日はまともに寝る事も出来ないまま、朝を迎えた。

あたしと夜刀の口論の原因は自分だって思い込んじゃったクラピカも、かなり寝不足気味。

あたしに完全にホールドされたキルアも、溜息吐いてたけど大人しく抱き人形代わりになってくれた。

初めてまともにあたしと意見が衝突しちゃった夜刀も、思念は漏れない様にしてるけど、落ち込んだ感情はダダ漏れだ。





まあでも。一晩あったら熱も冷めるってゆーか何てゆーか。





ぴぃちく。とか鳥が鳴いてる朝の日の光のなか、あたしはん~っと空に向かって伸びをして。

夜刀、朝飯は?」

さっそくごはんを催促した。




 




 




 





 
再びサバイバル生活に突入した日。




 




 




 




 
夜刀が慌ててごはんを調達しにいったら、残るのはあたしとクラピカとキルアの3人。

なんかすっごいビミョーです。ギクシャクしてます。雰囲気が。

なぜナニどーしてあたしクラピカけっこー好きなのに。

出来ればゴンやキルアに引き続き、お友達になりたいなー、なんて思ってるのに。





ちろん、と様子を見たら、ちょーどあたしを窺っていたクラピカと目が合った。

「・・・・・・・・・・・・何だ?」

あー。なんでしょう。なんでこんな、落ち着かないんでしょう。

「・・・・・・・・・・・・その、悪かった」

しかもナゼ開口一発目で謝罪。





「何が」

「・・・・・・昨日の、その、君と彼が口論になったのも、元はと言えば、私が・・・・・・」

「ソレは違う」





ぴしゃり、と切り捨ててやった。

違うんだよクラピカ。原因はソコじゃない。原因は、夜刀とあたしとの相違。

こんな世界にいるんだ。昨日でなくたって、いつか絶対あたしと夜刀は衝突してた。

クラピカの身の上話は、タダのキッカケに過ぎない。





「昨日の夜刀の言葉じゃないが。例えばクラピカが夜刀を殺したとして。そうすれば俺は、必ずお前を殺すだろう」

そんな例えを出したら、クラピカは表情を硬くした。

――――――いやホントにそんな事あるハズないけどね。

「解っている。どうしても赦せないからこその復讐だ。殺人が絶対悪だと思わない。だから俺も、お前の覚悟に何を言うつもりも無い」





それでも、ね。

「ソレでも、言って欲しくない。人の命が軽いなど」

特に夜刀には。言って欲しくなかった。





「クラピカにとっての仲間の様に。俺にとっての夜刀の様に。キルアにとってはゴン、か?」

「えっっ!?な、おおお俺!?」

「大切な友達、だろう?――――――まあ、自分の命よりも重きを置く存在というものが、この世にはある」





誰にだって、何にだって。大切なモノっていうのはあると思う。だからあたしはこう考えるんだ。

「俺やお前達が今まで殺してきた、もしくはコレから殺すかも知れない人間にも、そういう存在がいるなら」

あたしにとって他人でも。夜刀にとって水洗トイレであっさり流せるトイレットペーパーみたいな存在でも。

「誰かからすれば、ソレは重い命だ」

その事を、どうか忘れないで欲しい。





「奪われたから奪い返して、そしてまた、奪われて。ソレはソレで、俺は別に仕方ないと、思う」

殺す決意。殺される覚悟。誰かを悲しませて、誰かに恨まれる事がきちんと解っているのなら。

奪われたものは二度と還って来ないって解ってて、ソレでもその道を選んだっていうのなら。

「憎しみの連鎖の一部になると解っていて、其れでも憎しみが消せないと言うのなら、復讐も構わない、と思うんだ」





ただ、ひとつだけ。どうしても付け足したいのは。

「ただ、忘れないで欲しい。彼等の命も――――――何より、自分の命も。誰かにとっては重いのだという事を」

ソレが、あたしの考え。

長い間平和な世界にいて、イキナリアブナい世界に飛ばされたあたしの考えだ。





神妙な顔で聞いていたクラピカとキルアの目が、ぱちくり、とひとつ瞬きをする。

「――――――自分の、命も?」

ええ、そりゃそうでしょーよキルア。





「例えば俺が誰かに重傷を負わされたら。夜刀は如何すると思う?」

「んなの解りきってんじゃん。相手のヤツぜってー殺す」

「だろうな。昨日もそう宣言していたくらいだ。彼なら絶対に君の仇を討つ」

「だがもし其れで返り討ちにあって死んだりしたら?俺はきっと泣く。怒り狂う――――――何より、俺の所為で夜刀が、と絶望する。だから、自分の命も大切なんだ」





世癒ソレ本当か?」





をぅわ夜刀!!あんた何時の間に帰って来てたの!?

イキナリ声掛けないでよびっくりするじゃんかもう!!

てゆーかホントかって何それ!!





「お前俺を何だと思ってる」

あんたの心配もしない様な冷血漢だとでも思ってたんかい。

「俺が世界一大切にしたいオヒメサマ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その呼び方ヤメロ」

誰がオヒメサマだ誰が。

「いやだって事実だからな」





笑いながら、ゲットしてきた果物をキルアとクラピカに投げ残りをどさどさと地面に置いて。

ぎう、と。夜刀があたしに抱き付いてきた。





「・・・・・・子供達を、思い出したよ。アイツ等、俺が怪我をして帰ってきたら、凄く怒って」

あたしの首筋に顔を埋めて。甘えたがりの小さな子供みたいな仕草で。

「あの時は、何故怒っているのか解らなかった――――――だが、今なら解る」

夜刀から移ってくるのは、晴れ渡った空色の目と万華鏡みたいな赤い目。

「昨日は、ごめん、世癒」





・・・・・・良かったね、ナルト。サスケ。夜刀はちゃんと、人間らしい感情を身に付けてるよ。

「・・・・・・・・・・・・良い。解ってくれれば。忘れないで、いてくれれば」

ソレだけで、多分救われる想いだって、ある。





そう言って、あたしは目の前にある夜刀の髪に、キスを落とした。





「ところでヤト、子供達って誰」

・・・・・・・・・・・・いやんソコは突っ込まないでよキルア。




 




 




 










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