あたしとのおしゃべりで、キルアは辻斬りまがいの事ができませんでした。

まあ、話が終わる頃にはキルアの殺気もあたしの元気もなくなってたんだけどね。





そして、飛行艇の中での一夜は明けて。





予定を大幅に遅れて、辿り着いたのは塔のてっぺん。

凶悪犯を多く収容した刑務所。

通称トリックタワー。





・・・・・・・・・・・・今までの試験もかなりヤバいもんだったけどさ。

はっきし言わせて下さい。

仮にも試験でこんな物騒なトコ使うなよ。





 




 




 





 
1人で困難を乗り越えた日。




 




 




 




 
そんな事を思いながら、あたしは腕を組んだまま、じっと空を見ていた。

ああ今日もイイ天気だなぁ、みたいに。

ロッククライミングみたく外壁を伝って下りようとする受験者さんになんか目もくれない。

何故かって?

・・・・・・・・・・・・下なんか見れるワケないじゃんかこんちくせう!!





(紐無しバンジーはいけたのにね)

ソレはソレ。コレはコレさっっ。

あの時は致し方なく!!だったから目ぇ瞑ってまで挑んだけどっっ。

ソレでも回避できるトコは回避するに越した事はないさ!!





思念で言い返したら、は(俺は大丈夫なのに)と苦笑を返す。

その手には、ポーチから引っ張り出してきたリボルバー式の拳銃(コレまた威力と命中率アップの念込め済)が握られてて。

しかも立ち位置は、塔のほぼ中央にいるあたしから離れた建物と空の境界近く。

ロッククライマーさんを突こうとしてた怪鳥を悉く撃ち落としていた。





見ていたお子様組や年長者組、他の受験者さん達までもがその腕前に感嘆している。

まあ、目の前で一発百中で目ん玉打ち抜かれたらね。カミワザとしか言いようがないよね。

・・・・・・・・・・・・つか何で助けんの?いや、あたしも目の前で人が死ぬのはイヤだけどさ。

わざわざ、手の内・・・・・・ってホドでもないけど、こんな事も出来るんです的な事、周りに見られてまで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほぅら変態ピエロの目がまたアヤシく光った。





(いやでも、プレートは1枚でも多い方が良いかと思って)

――――――・・・・・・・・・・・・ああ、次の試験ね。

(そゆ事・・・・・・ソレに、アレに目を付けられてるのはもう今更だし)





最後のセリフはもう空笑いで諦めが入ってた。

そんなの言い分に、まあ確かに、とあたしはあっさり納得。

ずいぶんイヤンな納得ですが。





しばらくしてると、ロッククライマーさんは無事、怪鳥の攻撃範囲内から抜け出せたらしい。

その姿を確認したが戻ってきたから、あたしも一歩踏み出して。





がこん。





「・・・・・・・・・・・・え?」

!?」





なんかがフード越しでも解るくらい慌てて駆け寄ってきた。

だけどあたしの身体の浮遊感はそのまま。

上に向けた視界には、だんだんと閉まっていく扉。





・・・・・・・・・・・・コレって、落ちてるんですよね?





とか呆然と考えた一拍後には。

「ぅわたっっ!?」

どべしゃ、と床に落ちていた。





「・・・・・・いっつ~~~~・・・・・・」

何だいクッションくらい敷いとけよ!!

したたかに打ってしまった腰を摩りつつ、受け身すら取れなかった事をイキナリだったからだと責任転嫁。

そして痛みで涙目になった視線をちらり、と辺りに流せば。





うん。陰気な雰囲気が満載だ。

中世ヨーロッパの吸血鬼の住処とどっこいどっこいかもしれない。

ああ、そーいやクロウリーのお城がこんな感じだったよなー。

・・・・・・・・・・・・生きて、るかな。あの騒ぎに、巻き込まれたりなんて、してないかな。





――――――っ、ヤメだ。ヤメヤメ。

今そんな事を考えたって、仕方ない。

今は自分の状況を、コレからどうするべきかを、考えるべきだ。





ふるりっ、と頭を振る。ソレから気合を入れる為にも、パチンっ、と両手で両頬を叩いて。

「――――――よしっ」

あたしは、すっくと立ち上がった。




 




 




 










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