ち、沈黙がイタイです。

現在、あたしはキルアと一緒に飛行艇の廊下を歩いているワケですが。

黙々と歩いてるだけで、会話なんて一切ありません。

しかもキルア。じーさまにからかわれたイライラが、何かだんだん殺気に変わってきてます。





「・・・・・・・・・・・・ネテロ会長に勝てないのは当たり前だと思うが」

ぽつり、と言ってみたら、ちろん、とキルアがあたしを見上げてきました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。カワイクないからやめようねその怖い顔。





「ソレって、俺の事?ゴンの事?ソレともの事?」

「全員」





あ。今度は何。その、以外だ、って言いたそうな顔は。




 




 




 





 
お休みが全然お休みにならなかった日。




 




 




 




 
ってさあ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だ」

「強いんだよな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう見えるか?」





疑問に疑問を返したら、キルアはピタッと立ち止まって、まぢまぢとあたしを見てくる。

つられてあたしも止まるハメに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか他に通行者がいたらすっごい邪魔とか思われそうだけど。

まあイイや時間も時間だし。他に誰もきそうにないし。





「・・・・・・けど、何でも屋で、すっげぇ凄腕って有名だったんだよな?」

「事実は小説より奇なり、とも言うが」

「所詮はウワサって事?」

「どんな噂が飛び交っているのか、知らないからな」





うん。コレはホント。

だって初っ端に聞いたのが、「新人がオレタチの仕事横取りして自分達の手柄にしやがった」だったんだよ?

――――――まあ、ソレ言ったヤツ等は後で身の丈に合わない仕事受けて自爆しましたが。

ソレ以来、気にするのもバカバカしくなって、ウワサ話なんて耳からシャットダウンしましたよ。

はソレナリに調べて把握してるみたいだったけど、あたしそんなメンドそうなのキライだし。





「アンタ、知らねぇの?自分の事だろ?」

む。何ですかその呆れたもの言いは。

「実力の無いヤツ等の妬みや誹謗中傷を覚えておいてやる義理はない」

「誹謗中傷・・・・・・でもソレってさ、やっかまれるくらいには強いって事だろ?」





うーん。まあ、そー言われればそーかもね。

だけど、あくまでソレナリなんだよ。あたしは、ソレナリ、の強さしか持ってないんだ。

だから、さ。

「其れでも俺より強い人間はいる。ネテロ会長然り、幻影旅団然り、ゾルディック然り」

あの人達は、ホントにバケモンだ。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゾルディック、って?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。やっちゃったよついポロッと。

ああああキルアくんキルアくんっっ。目、目がっっ。ホンット怖いからっっ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・裏の大家と呼ばれる、暗殺一家だ。仕事で、荷を届けた事がある」

ウソじゃないよね。ちゃんと届けたもんね荷物。

「へぇ・・・・・・幻影旅団ってのは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A級賞金首の盗賊集団。護衛対象が、ヤツ等の狙うものだった事が1度、な」

遭遇したのは団長サマだけだったけど・・・・・・しかもあの人途中でターゲットあたしに変えてきやがったけど。





思い出したくもない事まで思い出してしまって、思わず出そうになった溜息を必死で押し殺す。

そしたら、なんかちょっと考え込んでたキルアが、あたしを見上げた。





「やっぱ強いんじゃん、って」

思わず、って感じで言われた言葉は、あたし的にはいささか納得いかないものでして。

「・・・・・・今の話の何処を如何解釈したらそうなるんだ」

聞き返したら、わっかんねぇの?なんてちょっと呆れ気味に言われました。

だから何がさナニが。





「だって、暗殺一家に荷物届けて無事だったんだろ?」

「・・・・・・・・・・・・まあ」

「暗殺者ってさ、顔が割れるだけでアサシンとして致命的じゃん。だから顔見たヤツ全員殺すじゃん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだな」

「ソレにその旅団ってヤツ等。目的の為なら手段なんか選ばないすっげぇヤバいヤツ等だって聞いた事がある」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうなのか」

、護衛でヤツ等の敵になったんだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」

「ヤツ等、邪魔者は全員皆殺し精神なんだろ?でもは五体満足でぴんぴんしてんじゃん」





言われて初めて気が付きました。確かにどっちも、高レベルでデンジャラスな人達だ。

遭遇したにも関わらず、今現在あたしが生きているのが不思議なくらいには。

だから、強いと言えば強いんだろう・・・・・・あたしの悪運は。





「――――――其れでも、だ。キルア」

見下ろしたキルアの頭に手を置いて。銀色の髪をかき混ぜながら、あたしは言う。

「俺は強くない。どれだけの訓練を積み、経験を重ねても。強い、と。自信を持って豪語出来る程、俺は強くない」

あの時、誰も助けられなかった。に縋った。レベル4を壊すのが精一杯だった。

あたしは。





「――――――あの子等を、守れなかった――――――だから、強くないんだ。俺は」





最後の言葉は吐息の様に。

含む想いを察したのかもしれない。キルアは何も反論せず、ただ、静かに聞いてくれた。

あたしには、ソレが少し、救いだった。




 




 




 










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