「さっきのアレは何だ。そして貴様は、誰だ?」
ひたひたと、刃物の鋭さ強調させて薄皮切れるか切れないか程度で押し付けられるナイフがコワイです。
しかも何!?何でみんな未だに戦う気満々なのさ!?
あたしが脳内でわたわたおろおろしてる時だった。
『・・・・・・・・・・・・あのさ、』
脳裏で、呆れた様な溜息が響いたのは。
終わって始まった日。
あまりにもその溜息が脳天直撃だったもんだから、驚いて集中が途切れた。
ぐらり、と身体が傾く・・・・・・ダメだ。『鋼の処女』もコレ以上持続してらんない。
だけど、あたしが地面とランデブーしなかったのは、あたしを支えてくれた4本の腕のお陰だ。
「おっと。未だ質問に答えて貰っていないぞ」
・・・・・・・・・・・・うん。その理由はおおよそ瀕死の怪我人に向けるモンじゃないと思うんだけどね団長サマ。
「取り敢えず、命に関わる傷だけ縫合しておくかい?」
取り敢えずって何さ取り敢えずってマチさん。
つかあたし、コレからどーしたらイイ?
『舞扇』は壊れた。虫の息で発動し続けてる『鋼の処女』も、コレ以上の持続は無理。
エクソシストになってからソレナリに鍛えてた身体も、色んなところイッてるし砕けてるし。
何より周囲には、怪我はしているものの戦闘にでっかい支障はなさげな旅団の皆様と。あたしの腕を掴んで下さってる、団長サマとマチさん。
どーする?どーする!?
いち。逃げる。に。謝る。さん。気を失う。
・・・・・・・・・・・・ライフ●ード的に言ったってダメじゃん!!ドレも無理な選択肢じゃん!!
『・・・・・・・・・・・・いや、だからさ』
また、溜息。誰ささっきから人の頭ン中で。言いたい事があんならハッキリ言え。よく
「・・・・・・き、こえな・・・・・・」
いじゃないか。
「『聞、こえな、い』?――――――まさかさっきので、鼓膜が破れたとても言うんじゃないだろうね◇」
いやいやいやいや。ピエロの声は聞こえてますから。聞きたくないけど。
「・・・・・・・・・・・・ほんとに面倒ね。どするね団長」
面倒面倒と連呼すんなチミッコ。
『ー・・・・・・アンタ何で俺起こしたの』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。
聞こえた。今度は。ばっちし。鮮明に。
『イノセンスだけでアレ壊せたんなら、別に俺起こさなくても良かったんじゃん』
・・・・・・・・・・・・うっわぁそうだよ。
あたしレベル4壊す為に『』を起こしたのに。全然『』の力使わなかったじゃん。
『挙句の状況がコレじゃさー・・・・・・』
・・・・・・・・・・・・うんごめん。謝る。コレはあたしが全面的に悪い。
だからコレどーにかして!!
泣き付く勢いで言った叫びは、やっぱり溜息に迎えられた。
『んー封印解いちゃった以上掛け直しには時間掛かるし効力も弱まるし・・・・・・少しくらい力使ってもあんま変わんない、か』
ほんっとごめんまぢごめん!!でもコレなら『』起こしといて良かったとあたしは思う!!
『あのね・・・・・・でも今のの状態じゃ次元の転移は出来ないからな。飛べてせいぜい今いるところの真裏くらいだ』
ドコでもイイよこんなでんぢゃーな人達から逃げられるなら!!
『りょーかい。んじゃ、ちょっと『重なる』よ』
声と同時に、身体の感覚がなくなる・・・・・・って、重なる?って何さ。
「あれ、動かなくなったよコイツ・・・・・・死んだ?」
って、物騒な事言わないでおくれよシャルちゃん・・・・・・とか思ってたら、イキナリ視界が、ぶれた。
おうわなになに!?何が起こったの!?
『いやちょっと飛んだだけ』
飄々とのたまったあたし・・・・・・『』は、何時の間にやら団長サマ達を見下ろす瓦礫の上。
まさかもう動けないだろうと思ってた人間がココまで動いて、旅団のみなさまの驚愕の顔はけっこうすっごい見物だ。
や。あたしだってビックリしてるんだども。
「貴様!!未だ――――――」
「貴殿等を巻き込んだ事には深く謝罪を申し上げる・・・・・・そして、先程の貴殿の質問に対しても」
団長サマの言葉を遮る様に、響くのは凛、とした声音。あたしの身体なのに、あたしの声じゃないみたいな。
コレは、『』の声。
「雇用者の意向上、俺には答える事が出来ない。よって此処で失礼させて貰う」
「待っっ――――――!!」
追い縋る様に飛んできた団長サマの声は、途中でぷつりと途切れる。
ソレは、『』に任せて気の抜けたあたしの意識が途切れた、と同意語でもあった。
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