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此れといって大きな問題も起きず、暦は秋から冬へ。 窓の外の風景が目に見えて赤と緑に彩られていくのに、ああもうそんな時期か、と思う。 故郷にいた頃は、毎年クリスマスを祝っていた。 俺の誕生日と、12月24日のあの日。このふたつの日だけは、小さくともケーキが食卓に用意されていた。 ・・・・・・家計の都合上、プレゼントはなかったけどな。 母さんと2人で。ささやかだけどお祝いをしていた。去年までは。 だが今年、俺がその日を過ごすのは此処、ミッドガル。 イベント好きなザックスは兎も角、セフィロスはそういった知識が薄いし。 多分仕事で潰れるんだろう・・・・・・要人の主催するパーティーの警備なんかで。 俺か?別に俺はどっちでも良い。 仕事だったらセフィロスの傍にいられるんだし、もし万が一オフになったとしても、セフィロスの処に押し掛けるつもりだから。 だが、イベント事に浮かれているのは何もザックスだけじゃない。 日に日に寒くなっていく気候に、街を彩るクリスマスのカラーリング。 目に映るもの全てがそわそわ、ざわざわ。そんな感覚が其処彼処でしている。 俺の生まれ育ったニブルは田舎だったから、ミッドガルの煌びやかなイルミネーションは、けばけばしく目に映る。 加えてニブルは北の土地だ、都会の冬なんて寒いとも思わない。 まあ、ソレ以前に1日の殆どを空調の利いた建物内で過ごしているから、外の寒さなど関係無いんだけどな。 むしろ空調が効きすぎていて、士官用の制服の長袖は暑苦しいくらいだ。 ・・・・・・そう。暑苦しい。 ・・・・・・暑苦しい、のだが。 「・・・・・・違う意味で暑苦しい・・・・・・」 「ん?何か言ったか?」 「イエ何デモアリマセン。」 ぐるり、と向けられた視線に、俺は無表情で返事を返す。 声を掛けてきた相手・・・・・・サー・サリカは、「あっそぅお?」なんて言いながら、再びの方に向き直った。 ――――――俺の肩を抱いたままで。 「んでな、アリシアちゃんが言うにはさ、あと2人くらい面子が欲しいってんだ」 「・・・・・・はあ。」 何が楽しいのか、サー・サリカは始終にっこにこだ。 ・・・・・・・・・・・・本当に、浮かれているのはザックスだけじゃ、ない。 の困った様な目が俺を見る。 ・・・・・・・・・・・・そんな目で見られても。俺だって余計に困る。 「カワイイ子から綺麗なオネーサマまで勢揃い。なっ、ストライフだってそんな子達に囲まれてみたくねぇ?」 いや、そんな事言われてもな。 「カワイイのも綺麗なのもサー・セフィロスで間に合ってますので、特には」 ――――――あ。 やばい。思わず本音が。 ・・・・・・・・・・・・ああ。サー・サリカの顔が微妙に引き攣ってる。 「・・・・・・セ、セフィロスさんが、カワイイ?」 恐る恐る、サー・サリカが聞いてくる。 その目は「マジでか!?」・・・・・・もしくは「お前、目、大丈夫か?」とかいう疑問が、コレでもか、と乗っていて。 ・・・・・・・・・・・・そんなに信じられないのか。 「ええ、可愛いですよ。仮眠を取ってる時とか」 少し、いやかなり、ムッとした俺に助け舟を出す様に、が言った。 サー・サリカが、お前もか!?みたいな目でを見る。 「近付いたら絶対、ガバッて一回起きるんですよ。で、ココに座れって無言でぱんぱんシートの上叩くんですけど」 「ああ。あるある。この間の餌食はザックスだったけど。なんだ、もやられた事あるのか」 「うん、やられましたよホントにもう。座った途端、腰に腕回して顔を腹にぐりぐりーってしてきてさ。で、そのまま枕にされて2時間半」 「甘いモノも結構好きだよな。人目のある処じゃ珈琲のブラックしか飲まないが・・・・・・ほら、この前がケーキ焼いて持っていった時も」 「ああ、あの時の・・・・・・まさかホールの半分がザックスのお腹ん中じゃなくセフィのお腹ん中に収まるとは思っても見なかったぞ俺」 「すっごい嬉しそうに食ってたよな」 「だな。そういやこないださぁ――――――」 他にも、アレやコレやと思い出しては喋る俺達だったが。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・す、すとっぷ。」 ぱふん、と。口に手の平を持って来られて、俺とはハタと気付く。 ――――――すっかり忘れていた。サー・サリカの存在。 気まずい沈黙が落ちて、 俺はに目を向けてどうしよう、と問う。 するとからもどうしよう、という視線が返ってきて。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、お願いだから。コレ以上俺の幻想ブチ壊さないでぷりぃずこのとーり。」 ・・・・・・何故か半分泣きが入った様なサー・サリカのセリフに。 俺とは思わず苦笑した。 |
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