Ver.Reno





「おんやぁ?誰かと思えばサー・セフィロスの下士官サマじゃねぇか」

「よう、子猫ちゃん。お使いかい?」

「・・・・・・」

「つれねぇなぁ。飼い主以外には鳴きもしねぇ、ってか」

「・・・・・・・・・・・・」

「もう1人はどうした?サーのご機嫌取りに置いてきたのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





 お下劣な笑いと一緒にそんな会話が耳に入ってきて、俺はふと足を止めた。

 ついでに、俺の斜め前を歩いてた上司も、歩みを止める。

 2人して顔を見合わせて、それから声のした方に目を向けてみたら。





 ソルジャー3rdの面々が、休憩スペースで屯してる。

 んでもって、ソイツ等がちょーど絡んでんのは、チョコボみたいな金の髪。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんかちょっと、気分悪いんだぞ、と。





「――――――レノ」

「何すか主任」

「彼が、例の?」

「クラウド・ストライフの方だぞ、と」





 呼ばれて振り返ってみたら、主任の顔も何時もの3.5割増しで堅い。

 多分、あのお下劣な会話とお下品な笑いの所為なんだぞ、と。

 元々、あーゆーのはキライな人だし。主任の中じゃ、あの2人は英雄さんよりも『英雄』なんだかんな。

 何で、って。そりゃあ。

 ――――――アイツがウチの大事な大事な坊ちゃんを助けてくれたヤツの片割れだからなんだぞ、と。






「何とか言ったらどうだ、ああ?」

「仮にも先輩に向かってどーよ、その態度」

「大体、前からてめぇは気に食わなかったんだ」

「サーの下士官になれたからって、お高く止まりやがって」

「どーせ身体売って手に入れたポストだろうが」

「足手纏いにしかならねぇ新兵のくせに」

「身の程ってモンを考えろよ、身の程ってモンをよぉ」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むかむか、むか。

 まー見苦しくも寄ってたかっていぢめてくれちゃって。

 ぢつは俺、あーゆー群れてないと行動起こせない腰抜け連中は、大っっ嫌いなんだぞ、と。

 しかも無謀にもあのクラウド・ストライフ相手に。よりにもよって主任の目の前で。

 ついでにとんでもないカンチガイが炸裂なんだぞ、と。





 2人を下士官に、ってモーションかけたのは英雄さんの方なのに。

 ソレに、確かに新兵だけど評価はSS。

 戦闘のノウハウだけみりゃ、オタク等と同等、イヤもしかしたらソレ以上なんだぞ、と。

 ――――――ソレからもひとつ。コレは素行調査をした俺の意見。

 英雄さん付下士官のクラウド・ストライフは、見た目アレでも中身はザックスより男前。

 ・・・・・・・・・・・・だからお馬鹿さん達の科白にいーかげんかんなりキてるんだぞ、と。





「主任」

「何だ」

「何か、なんつーかこー、アレ邪魔できるよーなネタが欲しいんだぞ、と」

「・・・・・・急に言われてもな」





 このままぷっちんキれてクラウドVSお馬鹿さん達でガチンコ起こる前に取り合えず止めておきたいんだぞ、と。

 ま、面子見る限りクラウドが負けるなんてなさそーなんだけどな。

 違う意味でヤバイ。こーゆー組織の上下関係は色んな意味で厳しいから。

 けどタークスとソルジャーって、あんま仲良くないしなぁ。





「――――――何をしている」

「サッ、サー・セフィロス!?」





 おおう。とか思ってるウチに意外な横槍。

 俺等が近付く前に、近付いた人影ふたつ。

 お馬鹿さん達が慌てて踵を鳴らして敬礼をする・・・・・・のを無情にも無視して、クラウドの前で止まったのは。

 ――――――絢爛な銀と、その腕に引かれる荘厳な黒。





「随分帰りが遅いと思ったら、こんな処で道草か?」

「違います。何処かの誰かさんが提出期限を守って下さらなかった所為で、各詰所から有り難い厭味を頂いていたんです」

「・・・・・・其れは俺だけの所為じゃないだろう」

「8割はソルジャー・ザックスですが。残りの2割はサーの所為です」

「・・・・・・・・・・・・言うな」

「上官が上官ですから」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわお。

 ホンットに言うな。お馬鹿さん達固まってるんだぞ、と。

 しかも英雄さん、皮肉られてんのにすっごい楽しそうだし。

 ・・・・・・・・・・・・あ。主任も驚いてるんだぞ、と。





「サーこそ、を連れ立って如何して此方に?」

「・・・・・・あ、あの、其れはですね、クラウド・・・・・・」

「まあ、ちょっとな――――――如何したクラウド、眉間に皺が寄ったぞ?」

「気にしないで下さい。今さり気無くの腰に回った貴方の腕に微妙にムカ付いているだけですから」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どっひゃあ。

 英雄さんがイヤガラセしてるんだぞ、と。

 んでもって、黒髪美人のさんが英雄さんに引き寄せられておたおたしてるんだぞ、と。

 しかもクラウドがすっげーイキオイで英雄さん睨み倒してるんだぞ、と。

 ・・・・・・・・・・・・あのー、主任。開いた口塞がってないんだぞ、と。や、俺もだけど。





「まあ、何にせよお前は今手が開いている状態だと、そういう事だな?」

「・・・・・・何でしたら自分が先程頂いてきた言葉を箇条書きに纏めて提出致しましょうか」

「遠慮しておく。其れよりも先ず優先すべき事があるからな。お前も付き合えクラウド」

「・・・・・・・・・・・・何にですか」

「飯を食いに行く」

「却下します。仕事は如何するんですか」





 ・・・・・・・・・・・・なんかこのまま2人の会話に聞き耳立ててんの、恐ろしくなってきたんだぞ、と。

 何がって、あの英雄さん相手にケンカ腰ってのがすっごいオソロシイ。

 しかも英雄さんがソレに楽しそーにしてるトコがまたオソロシイ。

 お馬鹿さん達なんか、固まる通り越して氷結までいってるんだぞ、と。





「――――――そう言われると思ったからな、取り合えず一通り済ませた。其れに正確にはに食わせに行くんだ」

「・・・・・・・・・・・・に、ですか?」

「ああ、此処最近、まともに食っていないそうでな」

「サー・セフィロス!!」





 あ。さん爆発。

 英雄さんに向けたいらんこと言うなこのばっきゃろー的視線がまたまた怖いんだぞ、と。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああああでもその後の何ですと?的なクラウドの視線の方がもっと怖いかも。

 ――――――そーいやザックスが愚痴ってたな・・・・・・・・・・・・

 クラウド、さん絡んだらすっげー怖いぞ、って。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、アンタ人にはちゃんと食わないと大きくなれないぞとか言っといて・・・・・・」





 お。クラウド目ぇ据わったんだぞ、と。

 さん固まったし。

 英雄さんが2人から距離とった・・・・・・ソレにしてもホンット楽しそーすねダンナ。

 となれば次はやっぱり――――――カミナリ?カミナリですか?





「他人に言う前に自分の生活態度改善しろ!!だからそんなに細いんだ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すいません」

「何事も謝って済むなら軍隊なんかいらない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご尤もで」

「説教は後にしておけ。今は取り合えず食事をしに行く。異論あるか?」

「ありません――――――も、無いよな勿論?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴザイマセン。」





 クラウド強いなぁ。英雄さん睨んでたさんがちっちゃくなったんだぞ、と。

 けど結局、英雄さんの1人勝ちっぽいなー。両手に花でお食事げっとだもんな。

 ああうらやまし・・・・・・・・・・・・げふごふんっ。

 やばいまずい間違えるなっ。アイツ等は男、アイツ等は男、アイツ等は男っっ!!





「2人共、何が食いたい――――――ああ先に言っておくが此処は俺の奢りだからな。上司の好意は素直に受け入れろよ?」

「・・・・・・・・・・・・ありがとうございます。に食べさせるんですから、に合わせます」

「・・・・・・私は、何でも・・・・・・」

「何でも、というのが1番難しいんだがな・・・・・・フレンチで良いか?」

「・・・・・・・・・・・・はい」

「じゃあ、決まりだな。」





 ついでに英雄さん達、お馬鹿さん達の事はとっくのムカシにアウトオブ眼中。

 まあココまで来たらもーアイツ等も風化の一途だから、アウトオブ眼中でも別に問題ないんだけどな。

 ちょっとゴシューショーサマなんだぞ、と。

 そしてそのままさっさと踵を返してすたすたと・・・・・・さんはちょっと引き摺られて・・・・・・あああ〜。行っちまった。

 イイ機械だからついでにお近付きになっとこうかなって思ってたんだけど。





 ま。取り合えずこの場はヒト段落ついたみたいでホッと一息なんだぞ、と。

 ソレにアレだけやったらとーぶんお馬鹿さん達も再起不能でお下劣な言葉もちっとは控え目になるだろ。

 俺だって、クラウド怒らせたら怖いって判ったし。崇拝してるワケじゃないけど自分の中の英雄さん像ちょっとコワレたし。

 後、さんに手ぇ出したらもれなくクラウドと英雄さんとザックスからオソロシイ目に合わされる事も、何となく知ったし。





「――――――主任」

「・・・・・・・・・・・・何だ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・行きませんか。坊ちゃんきっと待ってるんだぞ、と」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだな」





 何か、どっか疲れた感をビミョーに感じながら。

 俺はおんなじ様に疲れた顔をしてる主任に声を掛けたんだぞ、と。

























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