「――――――国家錬金術師には、大総統より二つ名と称する銘が与えられる」
細かい規約を、朗々と読み上げた後。
ひらり、とロイが俺に差し出したのは、1枚の洋紙。
「君が背負う、もう1つの名だ」
そう告げられて目を通せば。
ソコには、こう、記されてあった。
――――――汝、・に銘、『万物』を授ける――――――と。
ふしぎのせいねん
コレまた安易、とゆーか。
4大元素全部操る、ってだーけーでーさー。
んなの、錬金術師ならちょーっと構築式考えれば直ぐだっつーの直ぐ。
しかしまぁ言い得て妙、とゆーか。
なんたって俺の本性がアレだーかーらーさー。
万物、つか世界に可愛がられてるからね。
まあ、俺にぴったしの二つ名には違いないんだけど。
・・・・・・・・・・・・ドコまで俺の事見抜いてんだろうあのおっさん・・・・・・・・・・・・
でも、ま。
コレで晴れて俺もロイと同じ『軍の狗』に決定、ってワケで。
ちょっと上機嫌。
因みに、ロイは不本意そうな顔を隠しもしない。
リザさんは、そんな上司に困った様な視線を向けながらおめでとうございます、と言ってくれて。
マースも、まあ頑張れよ、と言ってくれた。
「トコロでさっきの話の続きなんだがな、」
「・・・・・・だからマースソレはもう終わりって」
「違う違う。その前。コレからどーすんだ?ってヤツの方」
マースの言葉に、ちょっと考え込む。
ハッキリ言って、あんまり考えてなかったんだよなコレがまた。
「・・・・・・んーこのまま軍に入隊もアリかなーって思うんだけど・・・・・・」
「却下だ」
取り敢えず思い浮かんだ可能性そのいちを口にすれば、ギロリと睨まれる。
・・・・・・・・・・・・ロイ、コワイよ。
思わず身を縮込ませると、くくくと噛み殺した様な笑み。
「どうやらお前さんの素は、コッチが本物みたいだな」
見ればマースが、ホンット楽しそうに笑ってて。
だけど、眼鏡の奥の目は、直ぐ様鋭くなる。
――――――そして、何を言うかと思ったら。
「ハッキリ言おう。俺はお前さんの事を信用出来ない。ロイに推薦されておきながら、期待に添えなくて悪いと思うトコロはあるが」
「っ、マースッッ!?」
「あー怒鳴るな、ロイ。何せ出会いがアレなら別れもアレだったんだ。仕方ねーだろ」
「そだね。仕方ないね。」
マースの科白にいきり立つロイも、俺のさらっとした返事には、絶句した。
リザさんは、話見えてこなくてワケ判らないって感じで、眉を顰めてるけど横槍は入れてこない。
だけどホント、仕方無いだろソレがふつーさ、とは。ロイに向けての思考。
突然空から降ってきた挙句――――――俺としては不慮の事故(?)だったんだけど。
自分がドコの誰なのか説明もせずに――――――いやあの時はまだ言葉覚えて間も無かったから、てコレは言い訳か。
あんな人の殺し方をしてみせて――――――だって慣れてんだもんよ。思わず手が出ちゃったとゆーか。いや習慣てのはオソロシイねぇ。
そんな変なヤツ・・・・・・いや俺のコトだけど・・・・・・俺だってお近付きになりたくないよ。
・・・・・・・・・・・・だけど、次に続いたマースの言葉に、今度は俺が絶句した。
「だが此れから先、信頼を築く為に、お前さんの事を知りたいと思っている」
・・・・・・はい?
ええと一体ソレはどういう・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソレは俺に自己紹介をしろと。そーゆーコトですか?」
「スリーサイズはいらねぇぞ。男のんな事聞いても嬉しくも何ともねぇからな」
悠に30秒くらい、たっっっっ、ぷりと間を置いて。
そろそろと聞いた俺に、マースはニヤと笑みを浮かべる。
ちらり、と室内を見回してみれば。
マースがそーくるとは思ってなくてちょっと驚いて、でも興味津々で俺の出方を伺ってるロイと。
無表情を装いながらも、俺から目を離さないリザさん。
「・・・・・・・・・・・・ごめん。無理」
ホント、期待を裏切って悪いとは思うんだけど。
俺は軽く両手を上げて、溜息を吐いた。
「――――――何故だ?」
「・・・・・・聞いて楽しい話じゃないのは確実だし。信じないと思うから」
俺だって、未だに朝目が醒めたらソコが自分のベッドの上で、ドッキリカメラ持った奴に全部夢でした、ってゆわれた方がドレだけ楽か。
ぼやく様に続けてそう言ったら、はあ?意味不明だぞお前、とか返されて。
俺もそー思う、とか苦笑して溜息吐く。
ホントに。全部が全部、夢だったら良かったのに。
ソレは、鼻歌の所為でココに飛んで来てしまったとゆー情けない事実か。
――――――ソレとも、俺自身がこうして生きている事?
ああ、でも。
「たったひとつだけ、言えるのは」
ロイが身を乗り出した。
リザさんが姿勢を正して、マースの目が先を促す。
そんな彼等を見渡して・・・・・・見回して。
「俺が暗殺・・・・・・殺しを生業にしていた時期があるって事かな」
すぅ、と息を吸い込んで一気に言った言葉は、俺としては出来るだけ軽い感じにしたかったんだけど。
てゆーか、実際声も口調も軽かったんだけど。
ソレを聞いた3人は、これでもか!?ってくらい驚いていた。