「い、何時から・・・・・・っっ!!」

「んー?多分、ロイが起きる前から」





起きてたんだ!?と喚く前にのほほーんと答える。

そしたらロイのヤツ、一瞬ビタッッ!!と静止して。





「・・・・・・・・・・・・っっ!!・・・・・・・・・・・・っっ!!」





見事にぼぼんっ、と顔真っ赤に爆発させました。

・・・・・・・・・・・・俺。ちょーっと、やり過ぎました?




 




 




 




 




 





ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 





ぴいちく、とか外で小鳥が鳴いている。

寝室から、リビングを兼用してるダイニングに移動して、取り敢えず俺はちゃちゃっと朝食の用意をした。

テーブルに着いているロイは相も変わらず、俺の前では緊張?で固まってる。





居心地悪いっちゃー悪いんだけど。

まあ、でも今までの「怖いこわいコワイ」ってオーラが無いだけ、マシかな。




「で?」

「・・・・・・えっ?な、何が?」





かちゃん、と。

目の前にトーストとスープとサラダと、後その他もろもろ、置いてきながら訪ねた俺に、びくんっ、とロイが反応する。

・・・・・・・・・・・・ちょっとさっき、からかい過ぎたかな、俺・・・・・・・・・・・・





「何時帰んの?」

「――――――帰・・・・・・・・・・・・」





ソコでどーして泣きそうな顔するよ、をい。

軍人さんがする顔じゃないって。





と、ソコではた、と止まる。

そーいやこの人、軍人さんだったよ。

今普通に私服姿でトレードマークの青い軍服着てないから、全然見えないけど。

しかも階級は中佐、だっけ?若いのに。

まあソレだけ頑張って来たからなんだと思うけど。





「そーいやさ、ロイ」

「・・・・・・・・・・・・何だ」

「しんどくない?軍人さんしてるの」





中間管理職の辛さは、けっこー俺も身に染みてる。





『軍の狗』とか『化け物』とか呼ばれたり。

――――――何せ俺自身、『道具』だった事も『駒』だった事もあるからな――――――





戦争勃発しちゃったら、問答無用で借り出し。

――――――って言っても俺の場合、殆ど暗殺か暗殺か諜報か暗殺かで、他の仕事はほぼご辞退させて頂いてたんだけど――――――





民衆からは突き上げられ、上からは叩き押さえられる様な。

――――――イヤ確かにじーさま以外の年寄り連中には煙たがられてたらしいけど、他の受けは良かった様な――――――






まあ兎に角、半端な心構えで出来る役職じゃないのは確かだ。

でも、けっこー甘い考えを持ってるらしいこの人が、またどーしてこんなキナ臭い職。

しかも中佐。





ん?と小首を傾げて、ロイの答えを待つ。

当のロイは、暫く無言で自分の手元をみていたけど。





「・・・・・・・・・・・・叶えたい、夢が、ある」

「うん」

「・・・・・・其の為に、私は軍人たる事を選んだ」





例え其れが、狗畜生と世間一般に後ろ指を指される様な事だとしても、か?

いざ戦争が起これば、心を殺し兵器に成り切る。

そんな、血と腐臭に満ち満ちた、茨の道だったとしても?





「・・・・・・何かを手にするならば、同じ代価の何かを手放さなければならない」

「・・・・・・錬金術にお馴染みの、等価交換、ね」

「そうだ――――――だから軍に所属するくらいで私の夢にこの手が近付くというのなら」





平穏な日常など、幾らでもくれてやる。





そう真顔で呟いたロイの真剣な眼差しに・・・・・・・・・・・・不覚にも俺は、一瞬見惚れた。

やっぱ俺この人キライじゃないよ、うん。





確かに俺って人に対して感心が薄いってゆーか無いってゆーか。

・・・・・・まあぶっちゃけ人間ってゆーのは愚かだと、心底思ってる節は、大いにある。

だけど、馬鹿な子ホド可愛い、って言葉の意味が良く判るのがこーゆー時なんだよな。





譲れないものを、持っている。

ソレは信念だったり、愛する人だったり、ロイのいう夢だったり。

だから短い人生の中で、色んなモノと衝突する――――――で、行きつくトコは最悪戦争、だ。





そして彼等は、その譲れないものを守る為には、戦う事を厭わない。

傷付くのが判っていても、前を見据える事が出来る。

傷付け合いながら争う人間の姿ってのは、端から見ててはっきり言って滑稽でしかないし。

戦いで生まれるモノは、怨恨とか悲しみとかそんなモノだけだけどさ。





だけど人間は、『彼女』が愛した人間は。

そして、『彼女』の想いを受け継いだ、俺の素直な気持ちは。





「――――――強いんだな、ロイは」





ふあり。

笑って言ったらロイは慌てて目を逸らした。

あ。耳まで赤くなってる。

・・・・・・さっきからずっと思ってたんだけど、ロイって赤面性?





「・・・・・・・・・・・・そうでも、無い」

「いや、じゅーぶん強いと思うよ俺は」





ソレはホント。

自分の信念貫くって、けっこーシンドイもんだから。

其の為に傷付く事を、俺は愚かな事だとは思わない。

逆に応援したくなっちゃうね。

ホントに応援するだけしかない、ってのも情けないけど・・・・・・あ。





「なあ、ロイ」

「――――――うん?」

「この前の話なんだけど」

「この前の?・・・・・・ああ、勧誘の件か。あれはもう、忘れてくれて構わな」

「なっても良いぞ。俺。国家錬金術師」





さらり、と世間話みたいなノリで言ってやったら。

お見事。と拍手を送りたくなるくらいに、ロイは目を丸くした。





「・・・・・・・・・・・・?・・・・・・行き成り、何・・・・・・」





漸く口を動かしても、ソレ以上の言葉が出て来ないトコロを見ると、だ。

多分頭ん中パニクってんだろーなー。ああたのし。

楽しいついでにもういっこバクダンを投下してやろう。





「但し条件1つ。俺アンタの下でしか働く気はないから、その辺の手回し頼むよ」





笑いながら言った俺の科白に、ロイはホントにカチンコチンに固まった。

























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