「ロイ。ロイ・マスタング」

自分を指差すロイと。

「ro-、roi?masuta-、angu?」

首を傾げながら復唱する青年。





・・・・・・・・・・・・何か途方も無く。

1歳児にパパって呼んでもらおうと躍起になってる父親みたいに見えるのは。

俺の気の所為か?




 




 




 




 




 




 
ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 




 
「ロイ」

「roi?」

「マスタング」

「masutangu」

「ロイ」

「roi」

「マース。マース・ヒューズ」

「ma−su・・・・・・hyu−・・・・・・?」

「アレだ、アレ」





アレとは何だアレとは。

というかソレ以前に、人に指を刺してはいけませんと親に習わなかったのかお前。

・・・・・・まあ、この場合指差した方が判りやすいが。





「マース・ヒューズ。マース」

「ma−su。hyu−・・・・・・hyu−?」

「ヒューズ」

「hyu−zu」





ああ、ソコでんな事繰り返してる所為か。

どっかノータリンに見えてきた青年まで、真似して指指してきたじゃねぇか。

つか何時までソレ繰り返すつもりだよ。





「ロイ」

「roi」





また、名前と一緒に自分の顔を指差して。

だから教育上、ソレはだな・・・・・・あ。

そうゆう、事ね。





ぴ、と次にロイが指したのは、目の前の青年。

ソレも、無言で。





2、3度瞼を瞬かせた青年は、ロイの指に倣う様に自分の指で自分の顔を指した。

さぁて、この意味が通じるか?





・・・・・・





・・・・・・通じた。思ったよりバカじゃないらしいな。

ソレにしてもね・・・・・・多分コッチがファースト・ネームなんだろうが。

、ね・・・・・・・・・・・・

舌噛みそうだな。何と無く言い難い・・・・・・イヤ、珍しい・・・・・・ぶっちゃけ聞いた事ねーな。

東の国の方でも聞かねぇんじゃねぇか?





?」

。・・・・・・roi?」

「そう、ロイ、だ」





って、おーい。まだ続けんのかよ。

次の作戦の見合わせは確か、18時からだったハズだ。

時間圧してんぞ?





「おい、ロイ」

「何だ」

「名前が判ったトコロで、報告しにいかねぇ?」





何時までも隠蔽できる事じゃねぇからな。人1人、拾ってきたなんて事は。

間違っちゃいねぇだろ?





「・・・・・・ああ、そうだな」





何故そんな不機嫌MAXな顔で睨み上げる。

1歳児と父親(?)のコミュニケーションに水を注されたのがそんなにイヤなのか。





「roi?」





本当渋々、ってな感じで立ち上がったロイだが。

青年・・・・・・の声に、見事に固まる。

その直後のロイの顔、こりゃ見ものだったね。

何せあの女たらしが赤面したんだぜ。

いっくら綺麗だとはいえ、自分より背の高い、男相手に。





・・・・・・とかゆー俺も、あの上目遣いにゃ思わずグラッとキてたが。

すまんグレイシア。

でも俺が愛してるのは世界でお前1人だけだからなっ!!





「あー・・・・・・マース。彼を見ていてやっててくれないか」

「何で俺が。ってーか俺もこの後の作戦会議に呼ばれてんだぞ」

「む、そうか・・・・・・」

「取り敢えず医務室にでも預けちまえば?」





サラリと流した科白に、ロイはいぶかしむ様に俺を見た。

さっきまでアレだけ得体の知れない奴、とか言っといて、何をイキナリ、とか。

彼は言葉が通じないから目を離すと何を起こしてくれるか判らないんだぞ、とか。

なのに何故そんな自分達の面識の薄い処に預けねばならんのだ、とか。

そんな目だ。





「極東の国から来た、言葉が通じないだけのタダの旅人なんだろソイツは?」

「ああ、そうだな・・・・・・そうだった」

「預けちまえ。ドンパチの途中で拾ってしまいましたって。さも今し方偵察から戻ってきましたといわんばかりに」

幸い、に担がれて戻ってきたロイの姿なんぞ、俺しか見てねぇんだしよ。





後の科白は、ロイの発火布の右手が上がりそうな気がしたんで心の中だけに留めておく。

まあ、厄介そうだが、ドンパチの最中で拾われた(どっちが?)ってーのは本当なんだからよ。





ロイの言った、空から降ってきたというのが本当だとしても。

下手に隠すのは得策じゃない。

だったら、ほんの少しの真実は、提示しとかねぇとな。

それに、ロイのヤツ、まーだ何かに対して俺に隠してる事、あるみてぇだしよ。





「んで、見舞いと称して顔覗かせて、そん時に何だかんだと理由付けて引き取る」

「其の理由とやらを考えるのが面倒なんだが・・・・・・」

「面倒でも考えろ。ソイツから目ぇ放す気ねぇんなら」

「・・・・・・・・・・・・判った」





ふぅ・・・・・・と溜息吐いたロイは、再びの目の前にしゃがみ込む。

そして、片腕を背に回し、もう片方を両膝の裏に差し込んで。





「uwaxtu!?nani、roi!?」





あ。多分コレは驚きの声だろうな。もしくは苦情、か。ソレとも非難か。

それにしてもオヒメサマ抱っことは。

ロイは兎も角、やってもらってるには恥かしい事この上無いだろうな。





「つか何故抱き上げる」

「・・・・・・・・・・・・彼は両足の裏を怪我しているんだぞ」

「あ。そか」





まさかソッチの気に目覚めたのか?、とかからかってやろうと思ったら。

呆れ混じりのロイの言葉が部屋の中に木霊した。

忘れてたぜ。さっぱり。




 




 




 




 






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