「・・・・・・・・・・・・何だと?」
告げられた言葉に黒の子はたっぷりと間を置き。
次いで、底辺を這う様な言葉と共に金糸を睨め付けた。
「帰れない、とは。如何いう事だ?」
「イヤ帰れねぇっつーか何つーか。帰り方が判んねぇっつった方が」
「どっちも同じだ」
金糸の言葉にピシャリ、と言い放つ黒の子の背後には、黒々とした暗雲が立ち込める様だ。
端で聞いていた一族の末弟は、のほほんと事の成り行きを眺める。
「・・・・・・巻物には書いて無かったのか、解除法とか」
「ソコまで解読進んでなかったろ。アレ結界みたいな持続性の術じゃねーし」
「・・・・・・・・・・・・もう一度、魂追いの術を使うのは」
「ムリ。追うべきチャクラの痕跡がコッチには無い。知ってるチャクラを探るには、ココは余りにも遠過ぎる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうするつもりだ」
「まあ、慌てても事態が好転するワケでもねぇし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな悠長な事を言ってる場合か」
「仕方ねーじゃん。つか一発で成功して、しかも異次元に飛ばされるなんて思っても見なかったからさー」
からからと笑いながらのたまう金糸。
ぷちん、と何かが切れる音が聞こえて。あーあ、キレちゃった、と、末弟は小さく息を吐いた。
見れば黒の子の背後、暗雲は真っ赤な炎に取って変わっていて。
一触即発。そんな四字熟語が、末弟の脳裏に過ぎる。
「こっ・・・っっっんの、ウスラトンカチ!!何でテメェはそう後先考えずに行動に移すんだ!!」
「なっ・・・・・・お前だって止めなかったじゃねーかよ!!」
「其れはテメェが自信満々に大丈夫だっつったからだろ!!なのに何だ、その『一発で成功』ってのは!!」
ひゅんっ、と何かが空を切る。金糸は其れを、僅かに首を傾ける事で交わし。
とすっ、と。背後の壁に突き刺さった音。何だろう、と末弟が首を巡らせれば。
黒光りする、クナイ一本。
「実際大丈夫だったんだから良ーじゃねぇか!!」
今度はしゅしゅっ、と音がした。
慌てて視線を戻せば、丁度黒の子が手にしたクナイを目の前まで持ち上げて。
キン、キンと金属音を立てて弾かれ床に落ちたのは。
矢張り黒光りする、手裏剣二つ。
「何処が!?大体、テメェは何時も何時も計画性が無さ過ぎなんだ!!」
「んだと!?つかジジィやお前の遣り方だったら、ぜってー年変わるじゃねーか!!」
「慎重に慎重を重ねて何が悪い!!」
「時間との勝負って言葉知らねーのか!!」
二人の姿が掻き消える。どうやら本格的に喧嘩が勃発してしまった様だ。
声を掛けようにも、頭に血が昇っている二人は聞きそうに無いし。
不用意に間に入ろうものなら、飛び交う忍具の餌食になる事は必須だろう。
取り敢えず此処は傍観の構え。一応兄の元に避難しようと。
末弟はそろり、と場を動いた。
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