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忍、だと言っていた。
恐らくはこの世界より、殺伐とした世界だったのだろう。
大切な者も守る物も其れなりに在ったと思うが。
血に濡れても動じなかった。
屍を見ても恐れなかった。
そして恐らく、人を殺す術を、既に身に付けている。
あんな、十を過ぎたばかりの、子供が。
そんな世界に、あの少年も、いたという。
だからこそ人食いなどという、狂気じみた事を仕出かすのかと思えば。
納得出来る様な、出来ない様な。
「・・・・・・世知辛い世の中もあったもんだねぇ」
「全くだ」
事の顛末を聞いていた元赤の番人は、京美人に出されたお茶をずずと啜りながら零し。
溜息混じりに受け答えするのは、総帥である。
「ソレで、どうするんだ?」
「犬猫とは違うけぇのぉ。今更おん出すワケにもいかんじゃろうが」
「・・・・・・そうなんだけどな」
分身の言葉に侍がのたまい、総帥の口から漏れるのは歯切れの悪い言葉。
ちらり、と目にした窓の向こう。笑い合う弟と二人の子供。
彼の少年の感情には、欠落した部分が多大に在るのだと黒髪の子は言った。
情緒が育ち切っていないのだと金髪の子は言った。
やっと己が『人』で在る事を認識し出した――――――人として、『生まれた』ばかりなのだと。
けれど過去の記憶は彼の奥底を深く深く蝕んでおり。
故に精神は著しく不安定であり、ふとした瞬間に『心』を忘れる。
・・・・・・・・・・・・そして表に現れ出でるのは、人食いの業。
「シンタローはん。先に言うときますけど」
「・・・・・・んだよ」
「あんお子拾うて来はったんはあんさんどすえ」
「・・・・・・わぁってる」
「コージはんやあらしまへんけど、犬猫とは勝手が違うんやさかい」
「・・・・・・だから、わぁってるって」
「あないな右も左もよお判らんチミッコ等ぁ見捨てたりしはったら、一生人非人言うて罵ったる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ま、面倒見るしかないんじゃない?拾った以上は、最後まで」
従兄弟の其の言葉が決定打だった。
何時表れるか判らない人食い。
頼むから団内で被害を出さないでくれと心底願いながら。
今まで以上の大きな溜息と共に、総帥は彼等の面倒を見る事を決意した。