ゆたり、ゆたり、と。コージは急ぐ事も無く廊下を歩く。
急な呼び出しも片付けてしまわなければならない仕事も無い。
戦闘では其の力を十二分に発揮しながらも。
書類整理、報告書、デスクワークに関する能力は全く皆無。
そんな有り難く無いレッテルを貼られてしまった故か。
多忙を極めるガンマ団の中で、唯一人暇の多い彼が向かう先は、G棟の一角。
寓話の中の眠り姫の様に綺麗な少年は。
今日こそは意識を取り戻したのだろうか、と。
そうであれば中々に有意義な暇潰しが出来るだろうに、と。
上背のある体格に似合わず穏やかな表情で。
片手に、矢張り似合わない果物籠をぶら下げながら。
――――――しかし、後ほんの僅かで目的の場所へ辿り着こうとした処で。
轟いた爆発音と響いた振動。
衝撃に、目の前で吹っ飛んだ扉。
「っっ、なんじゃあ!!?」
咄嗟に襲ってきた爆風に、腕で顔を庇いつつ駆け寄る。
其処で見たのは、肩で息をする同僚の背中と。
濛々と沸く煙の中、浮かぶ二つの人影。
そして・・・・・・・・・・・・響いたのは、聞いた事も無い男の。
悲鳴。
「――――――っっぁぁぁああああああっっっ!!!」
紅い飛沫が、白い床に飛び散った気がした。
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