「で、どないなりました?」

「ああ、一段落は付けてきた」



 だから本部に戻ったんだと、掛けられた質問に答えながら。

 一度は目が覚めたらしい少年の様子を、事後処理を片割れに押し付けて即効で伊達衆と共に見に来た総帥は、少々疲れた顔をしていながらも明らかに朗らかとしていて。

 一体どんな片の付け方をしてきたのか。まあどうせ無茶な事をやったのだろうと思いながらも。

 実際に何をしてきたのかは、恐ろしくて聞けない。



「薬物に対して、元々強い免疫を持っていたんだろうが・・・・・・」

「それにしても、ありえないですねぇ」



 そんな埃っぽい彼等の横では、一番最初に調べた時よりも、格段に数値が下がっている、と。

 新しく弾き出された検査結果に、首を傾げる研究員と医師。



「良いじゃねーか、回復に向かってんだろ?」

「そう堅ぉ考えんでも、ええと思うがのう」

「そげんしても、見れば見るホドめんこい子っちゃねー」



 難しい顔をしている二人とは対照的に、少年を囲む男達は暢気なものだ。

 そして、件の少年は、周りで騒がれているにも関わらず、反応は薄い。

 丁度目を覚ましていた時で、クッションを背凭れに、上体を起こさせたのは良いものの。

 中枢神経が未だに機能していないのか、アラシヤマに凭れ掛かり、虚ろな目で宙を見つめている。

 眠いのか、時折こくり、と船を漕いで。



「・・・・・・か、可愛いべ・・・・・・」



 思わず鼻を押さえて蹲るミヤギに向けられた、周りの視線は呆れた様な冷たい様な。



「けどこの調子じゃ、話とかすんのはまだ無理か?」

「当り前。命の危険性が無くなった訳じゃないんだ、本当ならソイツまだまだ面会謝絶モンだぞ」

「幾ら意識が回復したと言っても、重度の薬物中毒者である事に変わりありませんからねぇ」



 ふ、と何気無く聞かれた総帥の言葉は、研究員と医師によってあっさり一蹴。

 しかもここぞとばかりに、冷たい視線が突き刺さる。



「てゆーかお前等シャワーどころか着替えもせずに、何時までココにいるつもりなんだよ」

「一応とはいえココ病室ですよ?」

「衛生上ちょっと、どころかかーなーりー、宜しくないんだけど?」

「全く、コレだから常識の無い人達は」



 片や飄々と。片や溜息混じりに。

 確かに言われてみれば其の通りなので、押し掛けてきた男達はぐうの音も出ない。



「ハッキリ言わせてもらえば人口密度高過ぎなんですよアンタ達の所為でココ狭いのに」

「あー息苦しい。もう充分ソイツの様子は判っただろ?だったらもう用はねーよな?」

「どうせ明日も朝早いんですしそろそろ戻ったらいかがです?てゆーか戻って下さい邪魔ですから」

「・・・・・・わーったよ」



 自分達を追い立てようとする白衣の二人組に。

 標準よりデカイ男達は渋々立ち上がらざるを得なかった。




 




 




 




 




 










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