初めは、何て事は無い仕事だったのだ。
最近独立したばかりの、某国の代表よりの依頼。
激化の一途を辿ろうとするテロの鎮圧と、其の首謀者の捕獲。
其れだけ、だったのに。
「アルカロイドとバルビツール酸を併用してる。其の上アナボリックスまで」
「何だべソレ」
「あー・・・代表的な名前を挙げればコカインとトランキライザー」
「覚醒剤に抗不安剤・・・・・・滅茶苦茶だっちゃわいや」
「そうでもないぞ。多分、アルカロイドは自我崩壊、バルビツール酸は催眠鎮静の為に使用されたんだ」
「ちゅうと・・・・・・洗脳、か?」
「否定は出来ないな」
「アナボリックスステロイドゆうたら、確か筋肉増強剤でっしゃろ?市販でも売ってはる」
「ああ。だが極めて濃度が高い。裏で出回っているヤツなんかより遥かに」
「それって・・・・・・」
自然、誰もが口を紡ぐ。
合の手の様に向けられる質問に答えるジャンは、苦々しく表情を歪めたまま。
薬物の性質。其の意味。幾ら戦闘バカとまで評されようと、判らない訳ではない。
皆の心中を代表するかの様に、静かに訊ねたのはシンタローだった。
「・・・・・・・・・・・・人間を、クスリで殺人人形に仕立ててる、ってワケかよ」
「恐らくは、な」
顔の前で組まれた手指に、篭る力。
恐らく、と使いながら。返る言葉には、強い確信の意。
ちっ、と。誰ともなく漏れる舌打ち。其の後に、ぽつりとアラシヤマが零した。
「・・・・・・それにしたかて、おかしおすなぁ」
「うあ?何がだべアラシヤマ」
「・・・・・・・・・・・・あんさん少しは頭使いなはれ」
「たかがテロリストのクセに、どーやって告死兵団を雇えるホドの金を出せたのか、って言いたいんだろ」
「ああ、そーいやそーっちゃね」
「・・・・・・・・・・・・忍者はんまで・・・・・・・・・・・・」
だから脳味噌まで筋肉だなとと言われるのだ、と。
図らずも団のbPである新総帥と2である准将は思ったが。
既に諦観の域で片方は眉間を指で揉み、片方は大きな溜息を吐く。
「本部に連絡を。キンタローに一度全部洗わせろ・・・・・・ソレから、ジャン」
「うん?」
「――――――あのガキ、大丈夫なのか?」
不意に向けられた言葉に、ジャンは一瞬ぐっと息を呑み。
「・・・・・・・・・・・・薬物による不自然な肉体の強化は、負担が大きい。しかも今回、色んな薬が大量に使われてる」
紡ぎ出された言葉は、歯切れが悪く。
「投与された量や個人差にもよるが――――――長く以って一週間だ」
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