「何考えてはりますのや、あんさんはっっ!!?」
顔を合わせるなり飛んできた怒号に。
シンタローは視線を泳がせながら片手で髪を掻き上げた。
「あー・・・・・・傷に響くぜ、アラシヤマ」
「はぐらかさんといてや!」
負傷したらしい右腕を首から下げ。
シンタローの顔を下から睨め付けるアラシヤマの眼は。
深い黒色をしているというのに何処か煌々しく。
まるで彼自身が操る炎の様だ、とシンタローは思う。
「仮にもあんさん総帥でっせっ?一組織の頭張ってるんでっせ!?」
「あ?んなの今更言われなくても・・・・・・」
「判っておへん!!そないなお人が一番危ない最前線なんぞに出てからにっ、何ぞあったらどないしますのん!?」
「いーじゃねーかよ何もなかったんだからよー・・・・・・つかお前の方こそ其の怪我」
「今はわての事話しとるんとちゃいます!!何時でも恙無く事が運ぶとは限りまへんやろ!?」
「そりゃそーだけ」
「あんさんに何かあったら団の全員が路頭に迷う事になるんでっせ!?ええ加減自分の立場考えよし!!」
アラシヤマの言葉は確かに正論で、シンタローには耳が痛い。
しかし其れでも、云われっ放しは癪だと口を開こうとし。
しかし直ぐ様、口を噤んだ。
「・・・・・・何も敵のど真ん中に、単身乗り込む事あらしまへんやろ・・・・・・」
ほろり、と零された声音。
そろり、と胸に触れ。頼り無く赤い軍服を掴む左の指は、微かに震えて。
ことり、と俯かれた頭。
覗き込む、怒りに満たされていた瞳は今、不安に揺れている。
「・・・・・・ホンマに・・・・・・話聞いた時は身体の芯から冷えましたんえ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・悪い」
震える肩に、腕を回し。抱き締める。
小さく呟かれたのは、シンタローにしては滅多に無い愁傷な言葉。
「心底そない思てはるんやったら、次からはもう少し自重しなはれ」
「・・・・・・へーいへいへい」
途端、勢いを取り戻し。
さらりと離れ、普段通りの棘の在る声音で切り替えしてくる彼に。
さっきのあの可愛らしさは何処行ったんだと脱力。
まだまだ文句が言い足りないとばかりに言い募る言葉を流し聞き。
ふと、思い出した。
「ああ、そうだ。アラシヤマ」
「何どす?」
「其の敵さん・・・・・・告死兵団だがな」
「へえ」
「拾ったぜ、一人」
「へえ・・・・・・うぇぇぇええええっっっ!!?」
あっさり、と何気無く返事を返したのも束の間。
其の内容に思わず声を上げたアラシヤマに。
シンタローは「お前五月蝿ぇ」と眉を顰めた。
<<バック トゥ トップ ネクスト>>