心底から恐ろしいと思った事は、数少ない。

 人を殺す生々しさを知ったのは当の昔であるし、殺されそうになった事も在る。

 奇襲を受けた時も、退路を絶たれた時もあった。

 其れでも、ずば抜けた戦闘能力を保持し死地を生き抜いて来た男は。

 この時確かに、背筋に走る悪寒を感じていた。



「何なんだよ、コイツラはっっ!!?」



 思わず、そんな科白が口を付いて出る。

 眼下に迫るのは、敵。

 どれだけ痛め付けても、倒れない。

 何度地に沈めても立ち上がってくる、敵だ。

 夥しい位の傷を受けているというのに。

 既に意識など、飛んでいても可笑しくは無いのに。

 呻き声一つ上げる事無く。誰一人戦線を離脱する事無く。

 無数の砲撃を受けながらも。人形の様に、機械の様に。

 敵を殲滅せんと前進する黒い軍隊。

 痛みも疲れも、死すら判らぬ様な其の様。

 対して此方は消耗が激しい。

 己が参戦した事で僅かに戦況は立て直されたが、其れでも。



「・・・・・・ちっ、埒があかねぇ・・・・・・!」



 人に向けるには、些か威力が過ぎるものではあるが。

 何とか此れ以上戦闘を長引かせまいと。

 シンタローは眼魔砲の構えを取った。




 




 




 




 




 




 






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