妖の器となったのは、とても綺麗な子供でした。
何も知らず、何も持たず、何も望まず。
何も、育てられず。
故に、透明な硝子の置物の様に真っ新な。
只々、真っ白な生き物でした。
だからこそ、子供は妖を受け入れる事に何の抵抗も持たず。
妖の痛み苦しみを己が物に変換し。
大切に、何よりも大切に胸の中に包み込んで。
そんな子供を、妖は心から愛しました。
子供も又、妖を拠所にしていました。
互いが互いの幸せだけを、願いました。
己の幸せを、顧みようともせずに。
そして、妖と子供は、一つの存在に成りました。
妖の自我は子供の中に溶け込み。
妖の記憶は子供の記憶と成って。
妖の持つ想いも何もかも。
子供の中に、融けていったのです。
まるで、真っ白い紙を、淡く染める様に。
子供は、其れを受け入れました。
宝玉と呼ばれていた頃の記憶。
妖の想い。
彼女の、心。
子供は、全て、己のものとして受け入れたのです。
妖が、妖として。
子供に向けた最期の言葉と共に。
今も 昔も 此れからも
何よりも 誰よりも
お前の 幸せだけを
祈っているよ