(きゃーっっきゃーっっサスケくんがお姫様抱っこーーーーっっ!!)
(うううう羨まし過ぎるじゃないのしゃーんなろーーーーっっ!!)
思わず今迄の事を忘却して心で雄叫びを上げるサクラといのである。
「ぅをわっ!!?さ、さすけ!?イキナリ何っっ!?」
しかし違う意味で本当に叫びを上げたのがもう1人。抱き上げられた当人だ。
「五月蝿い。歩けないんだから大人しくしてろ。それにしても軽いなお前。もう少し食え。そして肉付けろ」
「余計なお世話だっっ!!ってーか歩くっ。1人で歩けるっっ。だから降ーろーせーっっ!!」
「却下」
「却下ってあのなー!!」
「却下と言ったら却下だ。例え痛みを感じてなくても、怪我や出血は体力を奪う。幾ら俺やナルトより強くたって、お前俺達よりスタミナ少ないんだからな」
「はいサスケの言う通りー。言う事聞くのはお前の方だぜ。大人しく運ばれとけって」
ぎゃいぎゃい喚くに、サスケはしれっとのたまい、新たに出来上がった死体を焼きながら、横でナルトがニヤリ、と笑う。
「仮にも俺年上よ!?上司よ!?言う事聞けっつーの!!」
「職権乱用は良くないな」
「じっちゃんと同等と見なすぞ」
ぐうの字も出ない様な真っ当な2人の言葉に、ソレでも頑張っては講義を試みたが、サラリと言われた科白にあえなく撃沈。
つかあんな狸と一緒にして欲しくない。ソレがの、目下一番の願いである。
そんな3人を端で見ていたサクラ達は、思わずぽかん、と間抜けた顔をしてしまった。
だってさっきまであんなに怖いと思っていた人が、イヤ今でも思い出したら背筋が凍るが、見た目の年に似合わぬ幼さで、自分達と同年代の少年2人に遣り込められている。
「さっきのは夢だったのかしら・・・・・・」とか「情けねー・・・・・・」とか思わず口を割って出てくるくらい、の態度も威勢もとっても弱かった。
そのはといえば、一向に自分を下ろしてくれないサスケやニヤニヤ笑うナルトに、暫くあー、とかうー、を繰り返して。
「・・・・・・・・・・・・も、いい」
疲れた様に呟き、大人しくなった。というより、抵抗する気力が削がれたというか。コイツラに何を言っても無駄だと悟ったか。兎に角脱力した様に溜息を吐いた。
白旗を揚げたに気を良くしたのはナルトとサスケだ。
2人は人の悪い笑みを浮かべて顔を見合わせたかと思うと、さっさかと行動に移す。
「さっき片付けたばかりだから、コレ以上何かが出てくるとは思えないが」
「念には念を。森を抜けるまでオレも一緒に行動すっから、お前等遅れんなよ?」
言うなり走り出したサスケとナルトに、一歩遅れた7人の少年少女達は、慌てて彼等の後を追って走り出した。
「子供ってのはアレだね、無駄に順応能力が高くて良いね」
「・・・・・・・・・・・・右に同じく」
「・・・・・・・・・・・・だな」
翌日。
あんな事があっても木の葉の里に舞い込んでくる任務が絶える事は無く。
ソレでも昨日とは全く違った場所での全く違った任務、しかしやっぱり担任が抜けた3つの下忍の班の代理担任を押し付けられたはのほほんと言い。
ナルトとサスケは一緒になって溜息を零した。
因みに今度の任務は、とあるお寺の庭掃除。
70過ぎたヨボヨボの住職1人しかいないソコは無駄にだだっ広く、長い間放っておかれていた所為か雑草は生えたい放題で、落ち葉はてんこ盛り状態だ。
「ちょっとちょっと、な〜に2人で揃って溜息なんか吐いちゃったりしてんのよ〜」
ナルトとサスケの溜息を見咎めたレモン色の髪の少女が雑草をぶちぶちっと根っ子から引き抜きながら口を開けば。
「親父かよてめぇら・・・・・・・・・・・・にしても、面倒臭ぇなあ・・・・・・・・・・・・」
その横にいた影使いの少年が胡乱な眼差しを向け。
「てめナルトッ!サスケッ!は兎も角てめぇらまでサボってんじゃねーよ!」
「キ、キバくん・・・・・・・・・・・・」
さっきから全然動く気配を見せない事に、竹箒を振り回し犬と一緒に吼える少年と、ソレを宥めようとする少女。
ちょっと向こうでは蟲使いの少年が黙々と作業をこなし。
その横で「お腹減った〜」とか呟きながら一応落ち葉を集めているぽっちゃり系。
「仕方ないでしょナルトとサスケくんは。2人が手を出したりしたら私達のする事無くなっちゃうじゃない」
コレも修行の一環なんだからと、熊手と大きな塵取りを持って動き回るのは薄紅色の髪の少女だ。
再び、ナルトとサスケは2人揃って仲良く溜息。
類は友を呼ぶというか何というか。
兎に角『表』で自分達の仲間として今まで付き合っていたこの同期の下忍達は、やっぱり一癖も二癖もあって。
自分達が隠していた実力も、昨日の鬼気迫るの戦う姿も。動揺したりパニクったりしたのは最初だけで、その後はあっさりと受け入れたのである。
ぶっちゃけ騙されていた事に憤怒を覚えて自分達から離れると思っていただけに、可也の拍子抜け。暖簾に腕押し糠に釘状態。
思わず、「何で怒らないんだ?」なんてこっちが聞いてしまった。
そしたら。
「ソレなりの理由があったんでしょ。じゃ、仕方無いわよ」
器が広いのか、単に楽観的なだけなのか、はたまた何も考えていないのか。そう返してきたサクラに2人は複雑な表情をしたものだ。
しかし、騙していた事に後ろめたさを感じながら、そう言って貰えて嬉しかったのも事実。
「ま、良かったじゃんか何にせよ」
2人の思考を見抜いていたのか、が笑って言う。
その格好は昨日と全く同じ原型を留めていない忍服姿で、しかし肌の露出している足元や手には白い包帯。
余りにもあっけらかんとしているから忘れていた。
彼は昨日傷を負ったのだ。普通の人間なら出血多量で死んでいるか、若しくは重態で速攻病院送りになって最低3ケ月は出てこれないくらいの。
そんなんなのに良くコイツに仕事任せるなあの爺ィ何時か絶対後ろから刺してやる、とか真剣に考えつつ。
「、怪我は大丈夫なのか?」
「無理はすんなよ?」
頬にでかでかと貼られた白いガーゼや手に巻かれた包帯を見ながら、ナルトとサスケが自分達よりも上にあるの顔を見上げれば。
はやっぱり笑って返して来た。
「だーいじょーぶだって。明日になれば全部消えてる」
その答えを聞いてホッとしたのも束の間。一拍後には科白の内容にナルトの思考がヒヤリと冷める。
ソレは、怪我の治りが以前よりも早くなっている事を示していた。人には到底有り得ない治癒能力。
狐に助けられている自分でも、可也のチャクラを使用しないとそんなに早くは癒せない。
そういえば、と昨日の事態を思い出す。
夜でなく、月も出ていなかったのに彼の表に現れた気配。滅多に見れぬ朱金と青銀。
その意味も理由も、知っているからこそ背筋が凍った。
刻一刻と。覆す事の出来ない現実。同化しているのだ――――――今、この瞬間でさえ。は。妖は。
「さーん、こんなモンでいーですかー?」
ナルトの思考を遮ったのは、サクラの声だった。見れば何時の間にか作業が終わっている。
集まった彼等の前には、こんもりと1つに纏められた落ち葉や雑草がででんとその存在を主張していた。
「おーし。んじゃ焼き芋でもすっかー」
軽快に笑いながら、が両腕にたんまりとサツマイモを抱えながら近付いていく。
溜息吐きながらもソレに続くサスケと、やったー!と喜ぶ同期達。
ナルトは思わず目が点になった。何時に無く自分がシリアスしてたのに。当の本人はドコまでもマイペースだ。
つか一体ドコから出してきたんだその芋の山は。
「チョウジー、腹減ってんの判るけどちゃんと焼けてから食えよ。生だとマズイぞ。腹壊すぞ。ああヒナタ、シノ、面倒だからそっちの雑草も上に被せちまって。一緒に燃やすからー。
サスケー火ぃつけてー」
しかしナルトの思いなど何処吹く風で、ちゃかちゃかと指示を出すに。
「ナールトー?何やってんだよ早くコッチ来いよー」
自分が悩んでいるのが、段々バカらしくなってきたナルトだった。
何故か最後でギャグ(?)オチになってしまいました
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