『ぷりーずへるぷみーこのとーりですぅううっっ!!』

目を覚まして上体を起こすなり。

スライディング土下座をかましてきやがったソイツにあたしは 「は?」 と目を点にした。




 




 




 






神サマ、泣き付いて来る、の巻。





 




 




 




 
イキナリ意味不明なコトしてるその丸い発光物体はおいといて。

・・・・・・うん。どーしてあたしこんなトコにいんだろう。





上見ても下見ても。右も左も前も後もなぁんにもない真っ白な空間。

あたし宿屋でワンコなを抱き枕に寝てたハズなのに。

・・・・・・・・・・・・あ。なんか見てたら並行感覚なくなってきた。視界ぐるぐるしてきた。

きもちわる。うぇっぷ。





『あうぅうホンットすみませんお休みのトコお呼び出ししてしまってでもでもどーしてもアナタとコンタクトとりたくってぇえっっ』

「テメェの仕業かい。」





ずびしっ。

薪叩き割るみたいにチョップ入れたら 『ぷぎゃっ』 とか言いながら発光体は転がった。

地面無いのに。ころころと器用ですな。





『いえ器用ってホドでも・・・・・・じゃなくてですねぇっ』

うわイキナリ復活。

『お願いします助けて下さい自分じゃもうどーしよーもできないんですぅぅううっっ!!!!』

ひょーん、とあたしの真ん前に飛んできたかと思えば、再び意味不明な事をのたまう発光体。





「つかアンタ何。んでココどこ。」

名乗りもせずんなトコ引き摺りこんで、開口一発目から助けて〜だけじゃ、何にも解らないってーの。





『ああああすみませんすみません』

「や。土下座する前にまず説明。」

でないと先に進まん。

『そそそそうですねすみませんすみま』

「せ・つ・め・い・し・て。」

いくら温厚 (?) なあたしでもキれるよ?

『・・・・・・は、はいぃぃぃ・・・・・・』





びくうっっ!!と跳ねた発光体がそのままあたしから距離を取った。

・・・・・・なに。そのいぢめっこを前にしたいぢめられっこみたいな反応。





『すっ、すみませんすみま』

「謝らんでいーからまず説明!!アンタ誰!!」

『はっ、はいぃいっっ!!ワタクシこの 〈界〉 の管理者をしてる大神って者ですぅううっっ』

「あたしを呼んだ理由は!!」

『ワタクシの 〈界〉 における死者の数が許容量を超え出してしかも怨念などから妖や鬼が半端なく生まれる様になってしまったのでソレを治める為に力を貸して頂きたくてぇええっっ』





びくびくと怯えながらも、でっかい声であたしの質問に答える発光体。





・・・・・・・・・・・・ちょっと待て。

死者の数が許容量を超えた?

妖や鬼が半端なく生まれる様になった?

具体的にどーすればそーなるんだ。





『・・・・・・とある島国で、戦乱が起こっているんです。〈界〉 の全土からすれば、とても小さな島国なんですが・・・・・・其処は、昔から神の集う土地でもあって・・・・・・』

神の、集う土地。ですか。・・・・・・もしかしてソコ、〈界〉 の中心的役割も果たしてる?

『・・・・・・はい。なのにその土地で戦乱が起こって、人も、鳥も動物も、沢山死んで、川も森も山も海も、疲弊して、命が、枯渇しつつあって・・・・・・』

枯渇って・・・・・・随分と穢れ澱みを溜め込んだな。よっぽどだよソレ?

『・・・・・・そうなんです。あの土地の穢れの所為で邪へと転換してしまった土地神は半数を超え、〈界〉 の至る処で、陰の気が充満しだして・・・・・・』

おいおいおいおい・・・・・・何気に深刻ですな。

『・・・・・・ワタクシも、本来の姿、ましてや人型など取る事すらままならず、アナタをお呼びするだけで精一杯で・・・・・・』





はいストップ。

アンタがこの 〈界〉 を統括する管理者――――――解り易く言うところの大神だってのは解った。

そしてこの 〈界〉 の危機的状況も、理解した。

なのに何故ナニどーして呼び出されたのがあたし?





そりゃ人外に片足突っ込んでけっこー経ちますがね。ソレでもやっぱし6割以上はまだ人間だから、階梯で考えるとそんな力無いよ?

どーせなら他の〈界〉の神サマに手を貸してもらえばいーのに。





『管理者は他の 〈界〉 に手を出してはいけないんです。力を貸すのも。〈界〉 と 〈界〉 が混ざり合ってしまう危険性があるので』

ありゃ、そなの?

『はい・・・・・・ですがただひとつの例外。ソレが、アナタなんです』

――――――・・・・・・あー。もしかして、宝玉?

『アナタはそう名乗っているんですね。ワタクシ達は、神々の寵児、とお呼びしてますが』

うんあたし (とゆーかあたしの中の魂) に色んな呼び名があるのは知ってる。で?

『〈個〉 として完結してしまった 〈界〉。〈全〉 を内包する 〈一〉。其の性質故に、アナタは管理者と同等以上の力を持ちながら、どんな 〈界〉 にも干渉し、溶け込む事が出来るんです』

・・・・・・ああ、うん。にも前に似たよーな事言われた事ある。なに、ソレって世界相手でも一緒なんですか?

『はい。一緒です』





きっぱりはっきり断言されました。

つっても、ねぇ?

確かにこの 〈界〉、話を聞く限りじゃお先真っ暗一歩手前であぁヤバいなぁって解るけどもさ。

イキナリ呼び出されて助けてって言われたって、あたしに世界いっこまるまる救えるだけの力があるなんて思えん・・・・・・封印解いたら別かも、だけど。





そんな事を考えてたら、再び発光体がずしゃぁああっっ!!とスライディング土下座してきた。

『お願いしますっ!どうか、どーかお力をお貸し下さいっっ!!ワタクシにはもう穢れを祓う事も澱みを清める事も出来ないんですぅうっっ!!』

って、言われても。

『要所要所の力場を浄化して下さるだけで良いんですぅううっっ!!』

・・・・・・ん〜、でも、ねぇ?

『死にかけた土地に息吹吹き込んでくれとか戦起こしてる人間共をぎゃふんと言わせてくれとかあわよくば戦乱を収めてくれとか、そんな事までは望みませんからぁああっっ!!』

・・・・・・・・・・・・うん。ソコまで望んでたワケね。





ソコまではちとずーずーしい気がしないでもないですが。

・・・・・・しゃーない。

「ま。コレも何かのご縁ですし。力貸してあげませう?」

ココまで下手に出てるのにスルーはちょっとね。

断るのに罪悪感感じるとゆーか何とゆーか。





『っっっぁありがとうございますぅぅううううっっ!!!!』

「うわぁっ、ちょ、飛び付くな!!」





びょーんっっ、とゴムボールみたく飛んできた発光体を、べしりとはたき落とした。

したら、『うっうっひどい』 とか泣きながら、『でも嬉しいですぅうう』 を繰り返す。

・・・・・・なんか何気にウザくなってきたよこの人。





「あ。トコロで発光体・・・・・・いやいや大神サマ?」

『は、発光・・・・・・いえ、何でしょう我らが寵児』

「や。その呼び方止めてにして。」

『畏まりまして。ソレで、何でしょう

「あたしの片割れは?一緒じゃないの?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』





・・・・・・・・・・・・何ですかそのチンモクは。





『・・・・・・・・・・・・お、怒らないで下さいね?』

「・・・・・・・・・・・・ほーか怒るよーな事したのか」

『すみませんすみませんホンットーにすみま』

「ええいホンットうっざいなアンタ!怒る怒らないは後で決めるから今は質問に答える!!」

『はいぃぃいいっっ!!じっ、実は、』

「実は?」

『・・・・・・あ、アナタをお呼びする時に、一緒にお連れしたんですけど、途中で落っことしちゃいました・・・・・・てへっ☆』





なぁんだ落っことしたのかそっかそっか。

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってなぁにが『落っことしちゃいました』だこのアホ神ィィィイイイッッッッ!!!!」

ぐわしぃっっ!!と発光体を引っ掴んでぐわんぐわん揺さぶる。

しかも言うに事欠いて 『てへっ☆』 て何だ 『てへっ☆』 って!!そんな軽ーく言って済まされる事ですかい!?





『すすすすすみませんすみませんすみませんぅぅううううっっ!!!!』

「ドコに落した!?落としてからドレ位経った!?まさか時空嵐とか次界の挟間とかに落したって言うんじゃないでしょーねぇええっっ!?」

だとしたら怒るドコロの問題じゃないよ!?解ってんの!?





『だだだだ大丈夫ですぅうういいいい今からワタクシがアナタをお送りする場所からそう離れてないですぅうううっっ!!』

「そ。ならイイや」

がくがく揺られながら舌噛みつつ答えた発光体を、あたしはぺいっと放り出した。





〈界〉 の中のどっかに落ちたんならだいじょーぶ。例えソコが戦争真っ只中だったとしても。

あたしの守護者はあたしより強い。ミサイルだって片手で受け止めて投げ返すよーなヤツだ。常人相手に遅れなんか取るもんか。





・・・・・・・・・・・・いや。別の意味で大丈夫じゃないかもしんない。

じゃなくて主に周囲が。

・・・・・・・・・・・・あたしが傍にいないからって、暴走してたりしたらどうしよう・・・・・・・・・・・・





一瞬すんごい怖い予想が脳裏を横切って、あたしは慌ててぶんぶんと頭を振った。

・・・・・・・・・・・・横で同じ様に発光体もぶんぶんしてる。何処が首で何処から頭か解らないけど。

なんか、考えが伝染してたみたいだ。





「・・・・・・とりあえず。」

『・・・・・・は、はい・・・・・・』

「あたしの出来る範囲で何とか土地の浄化してあげるから、さくっと下界に降ろせ?」





つかその前にさくっとと合流しないと。心配だ。ひっじょーに心配だ。

あたしはココで呼ばれた理由も聞いたしが同じ 〈界〉 にいる事も知ったけど。

は知らないもんなぁ。





にぃっこり。

今あたしに出来る最高のとっても綺麗な、だけどその実目だけが笑ってない笑みを向けたら。

発光体は『畏まりましたぁああ!!』と絶叫に近い声を上げながらその光を強くした。




 




 




 











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