「・・・・・・・・・・・・はぁ?」
素っ頓狂なの声に。
俺は何か可笑しな事を言ったか、と首を傾げる。
「・・・・・・ちょ、ちょっと待て。お守り?」
「ああ」
「士度が?」
「ああ」
「・・・・・・も、もっかい聞くけど、な、何の?」
「恋愛の、だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もう一度、と言うから答えてやったのに。
ヤツは見事に硬直した。
・・・・・・俺は何か可笑しな事を言ったのか?
装飾店
『 R
U B B I S
H 』
「・・・・・・あーそっかー。マドカちゃんへのお土産ね。うんうん」
「好きだからな、女は。そういうのが」
俺の話を聞いたが、神妙に頷いてみせるのに、俺もまた相槌を打つ。
と、いうか。
其れ以外に俺がそんなモノを買う理由があるのか。
「・・・・・・・・・・・・そ、そうだよな。うん。あはははは」
・・・・・・思っていたみたいだな。
全く、勘違いにも程がある。
「・・・・・・それで、あるのか。ないのか」
「あー、あるある。色々。揃えてるよ」
こっちこっち、とが手招いた先のテェブルには。
綺麗に並ぶ鉱石の加工物。
「1番ポピュラーなのはー、やっぱコレかな?ロォズクウォツ。恋がやって来ます様にー、ってヤツ」
――――――成る程。確かに。
色恋沙汰が好きな女が好みそうな色だ。
半透明の桃色。
しかも、ご丁寧に可愛らしくハァト型で。
・・・・・・俺の趣味には合わねぇな。
「他には?」
「これ。インカロォズってゆってね。恋が成就しますー、って石なのさ」
問い掛けにが手に取ったのは、さっきのヤツよりも濃い薔薇色をした、石。
名前に付いてる花を模した、複雑な形。
少し、ごてごてしくないか?
「その他にも、ブラッドストォンには献身的、一途な愛って意味があるし。
ムゥンストォンは訪れる恋が幸せなものであります様に、って願いが込められてるね。」
色々取り上げるヤツのウンチクに、一応ふんふん、と頷いておく。
・・・・・・後で直ぐに忘れるだろうが。
それにしても、色々あるんだな。
もう適当に買って帰ってやろうか。
そう、思った時だ。
視界の端に、ふ、と見えた淡い薄紅。
まだまだ続くウンチクを横目に、そろり、と手に取ってみる。
しげしげと眺めてみる其れは。
まるで。新緑から落ちる朝露の雫の様な。
「ソレはさ、ピンクアクアマリン、ってゆって、」
隣で、が言った。
ふ、と顔を上げてヤツを見る。
其処には。
ふありふあり、と。空に浮かぶ白い雲めいた、柔らかい。
「愛を育みます、って意味があるんだよ」
ま、今の2人の状況見れば、ソレが1番しっくりくるんじゃない?
士度にしてはカンがイイよね。やっぱり猛獣使いだからかな。
・・・・・・どういう意味だ、と突っ込みたくはなったが。
藪蛇になりそうだから止めておく。
――――――強ち、ハズレてもいねぇし。
其れに、この色。
透明に近い、淡い貝の様な。
桃より薔薇より。
マドカには、此れが1番良く似合いそうだ。
決めた。
「コレにする」
「ハイまいどあり〜♪」
手渡した首飾りはの手の中で箱に入れられ。
白い包装紙に淡い水色のリボンを掛けられ、綺麗にラッピングされていく。
・・・・・・・・・・・・待て、ラッピング?
「だってプレゼントだろ?」
「あ、ああ。まあ、一応は」
「だったらちゃんとしないとな」
「そうなのか?」
普通にハダカのままで充分だと思うんだが。
「女の子はね、こーゆーのは開けるトコから楽しみにしてるモンなのよ」
「そういうモンか」
良く判らないが。
「そうそう。・・・・・・っと、はい500円ね」
差し出された首飾りは紙袋の中。
言われた値段に頷いて、ポケットから金を探り・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・待て」
「何」
「何故500円」
プレートに表示されてんのは、1000円だろうが。
「不服か?だったらタダでもいいぞ?」
「イヤそういう意味じゃなくてだな・・・・・・」
安過ぎるんだよ。
「いんだよ。士度だし。マドカちゃんへのプレゼントだし。」
だから半額。有り難く甘えとけ、と。
笑うは、うろたえる俺とは正反対に爽快に。
「・・・・・・・・・・・・それで成り立つのか、この店?」
コイツの経営方針、少し不安だ。
それでなくても、此処に置いてあるモノは。
状態もデザインも上質な1点物ばかりのくせして、本来有り得ないくらいの安値なのに。
「ん?ま、なるよーになるだろ」
・・・・・・・・・・・・一瞬頭痛くなった。
ソレでイイのか経営者。
「・・・・・・、お前・・・・・・」
「んー?」
「ハッキリ言って、向いてねぇな」
店を持つには。
需要と供給、って言葉くらい知ってるだろうに。
なのにそんな、甘いコトばっかり言ってると、何時か絶対、経営難でこの店潰すぞ。
もう少し、利益の事も考えねぇと。
折角、裏の仕事から足洗ったのに。また逆戻りしかねねぇ。
しみじみ。
本当にしみじみ、心の底から溜息混じりに指摘してやったら。
まるで大輪の華が咲く様に。
「いんだって俺は甘いくらいで」
だからソレは、褒め言葉としてとっとく。
その言葉の意味は少し、いや可也諮りかねたが。
取り敢えず本人がそう言うなら良いんだろうな。
・・・・・・ああ、いや。1つ訂正してくれ。
「褒めてねぇよ別に俺は」
<<バック トゥ トップ>>